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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 夏季フォーラム後の記者会見における十倉会長発言要旨

2024年7月19
一般社団法人 日本経済団体連合会

【夏季フォーラム2024】

静かな軽井沢の地で会長・副会長、審議員会議長・副議長が一堂に会し、大いに議論を深めることができ、充実したフォーラムとなった。また、3年連続で岸田総理をお迎えできたことにより、経済界と政治との連携が今後一層強化されるだろう。

今年は、藤井輝夫先生、武田洋子先生、ジェレミー・ジュルゲンズ先生より、非常に示唆に富むご講演をいただくとともに、熱心な討議が展開された。講師の方々のお話を踏まえ、2040年を見据えたわが国の重要政策課題について議論を重ね、「夏季フォーラム2024 軽井沢宣言」をとりまとめ、岸田総理に手交できたことは意義深い。

加えて、博覧会協会の石毛博行事務総長の特別講演を通じ、大阪・関西万博の成功に向けて一体感の醸成を図ることができたのではないか。

〔ビジョン「Future Design 2040」の策定に向けた今回の議論の印象について問われ、〕各テーマについて、参加者が口角泡を飛ばさんばかりの議論をした。議論の結果は、2040年に目指すべきわが国の経済社会のビジョン「Future Design 2040」の策定に向けた大変良い材料となったのではないか。

〔「軽井沢宣言」で掲げた四つのテーマの中で、特に注力したいテーマについて問われ、〕それぞれ独立しているわけではなく、相互に影響を及ぼし合っており、いずれのテーマも重要である。ただし、中でも、地域に関するテーマと教育・人材育成に関するテーマは、経団連としてあまり取り上げてこなかったが、面白い議論となった。「Future Design 2040」でも良いビジョンを示すことができるだろう。

〔「軽井沢宣言」で言及した「新たな道州制(仮称)」の内容や、宣言に盛り込んだ背景について問われ、〕道州制の議論は緒に就いたばかりであり、これから検討していく。今回、宣言に記載した「新たな道州制(仮称)」は、過去の議論のように行政権のあり方に力点を置いて議論するわけではない。議論の目的は、各地域の多様性の確保と地域間での競争の促進の二つである。中央集権のもとに47都道府県が存在する形では多様性は確保できず、競争も生まれにくい。例えば地域を10程度に区分し、各地域がそれぞれの特色を踏まえ、多様性を確保し、互いに切磋琢磨できるシステムとすることが必要であろう。

地域経済社会のあり方は、「Future Design 2040」の六つのテーマの中でも意見の分かれるテーマであり、ビジョンの取りまとめに向けてしっかり議論していく。

〔「Future Design 2040」の取りまとめに向け、全世代型社会保障の給付と負担、とりわけ税負担のあり方について問われ、〕「Future Design 2040」は、「持続可能性」と「公正・公平」をキーワードに掲げており、全世代型社会保障改革はその典型である。

三菱総合研究所の調査によると、社会保障の負担方法について、年代別に見ると、消費増税が望ましいと考える人の割合は20代が最も高かった。社会保険料は基本的に現役世代が拠出しているため、現行の社会保障の給付と負担のあり方が公正・公平でないと考える若者が多いことが要因であろう。若者の消費支出が少なく、また結婚して子どもを持ちたいと考えないのは、若者が将来不安を感じているからである。将来不安の解消には全世代型社会保障の実現が欠かせないが、効率化による歳出改革だけでなく、不公正・不公平感の是正が必要であり、そのためには社会保障4経費を使途とする消費税を含め、税と社会保障を一体的に考えなければならない。現在の日本の社会保障制度は低負担・中福祉だが、財政的に持続可能とするには中負担・中福祉であってもよいという考え方もあり、引き続き広範に議論していく。

〔後任会長の人選について、夏季フォーラムを経た現在の考えを問われ、〕後任会長の人選を決めるにはまだ時期が早い。様々な危機が相互に複雑に影響し合っている昨今にあって、全体最適の観点に立ってそうした課題を解決すべく、「Future Design 2040」の検討を始めた。検討に際して、経済・産業政策論だけでは不十分であり、社会性の視座、つまり社会の構成員である企業として社会とどう向き合うかという視点が大事である。そうした視点を持った方にぜひ後を託したい。今の経済界には多くの適任者がおり、じっくり考えたい。

〔社会性の視座の経団連での浸透度合いについて問われ、〕会員企業が社会性の視座について考える機運は高まっていると思う。相互に複雑に影響し合う様々な課題を全体最適の観点に立って解決するためには、社会性の視座は欠かせない。

行き過ぎた株主資本主義や市場原理主義が原因で生じた社会課題は個々の政策だけで解決することはできず、やはり社会性の視座をもつことは重要である。他方で、市場の力を借りることも大切であり、その意味で、社会性の視座と対立するものではない。

【米大統領選挙】

〔トランプ候補が当選した場合の日本企業への影響について問われ、〕トランプ候補は自国第一主義を掲げており、当選した場合には保護主義的な政策を打つことが予想されている。ただし、そもそも世界の潮流や各国の政策は振り子のように揺れ動くものであり、企業はそのたびに右往左往することの無いよう、中長期の視点で事業戦略を立てる必要がある。米国に進出している多くの日本企業は、中長期的な戦略を立て、産業政策に強い権限を持つ各州とも既に関係を構築している。一時的な影響は生じうるものであり、対応も必要だが、日米関係はこれまでどおり良好であると思われるため、あまり心配はしていない。

【原子力発電】

〔原発の再稼働について問われ、〕電力の安定的な供給基盤の確保は、民間企業による事業の予見可能性の大前提であり、欠かせない。クリーンなエネルギーの供給基盤として、原子力発電と再生可能エネルギーがあるが、日本の地形的条件に鑑みれば、再生可能エネルギーの活用には限界があり、原子力規制委員会の厳しい規制をクリアし、地元の理解を得られた原発は早期に再稼働すべきである。事故発生時の避難計画の整備といった論点も含め、再稼働に向けた議論の加速化が必要である。

また、既存の原発の再稼働だけでは不十分である。次世代革新炉の開発・実装や、高レベル放射性廃棄物の処理、核燃料サイクルの推進などを含め、全体を俯瞰し、長いスパンで論じる必要がある。

以上

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