一般社団法人 日本経済団体連合会
【日本経済の見通し】
「ウィズコロナ」の生活様式が浸透する中、内外の人の往来をはじめ社会経済活動の正常化が一層進み、非製造業を含めて上向いていくことを期待したい。他方、欧米における金融引き締めや中国の感染再拡大等による海外経済の下振れリスクが懸念材料であり、引き続き注視する必要がある。
2023年の日本経済を占うキーワードは「成長と分配の好循環」。その実現に向け、投資と消費を活発にしなければならない。多くの企業で、グリーントランスフォーメーション(GX)やデジタルトランスフォーメーション(DX)を中心に積極的に投資しようという機運が高まっている。実際、経団連調査(2022年12月13日公表)によると、国内投資を維持・増加させようという企業が9割以上に上る。春季労使交渉で賃金引上げのモメンタムを維持することは企業の責務である。そして、それが消費拡大につながるよう、全世代型社会保障制度の構築を通じて国民の将来への不安を払拭する必要がある。
【日本経済の活性化】
〔日本経済再浮上の方策を問われ、〕分厚い中間層の形成が重要であり、次の3点に注力すべきである。
第1に、ダイナミックな経済財政運営を通じた「成長と分配の好循環」の実現である。もちろん財政健全化は進めるが、GXやDX、スタートアップの育成等を通じて経済成長を実現するため、単年度予算主義から脱却し、中長期的な観点からダイナミックな経済財政運営を行うべきである。第2に、公正・公平で国民の安心を高める全世代型社会保障制度の構築である。第3に、働き方改革である。とりわけ、女性の活躍をさらに進めるために、男性の育児・家事への積極的な参加はもとより、育児支援等を充実させる必要がある。
【2023年春季労使交渉】
足もとの物価高はコストプッシュ型であり、これをデマンドプル型に移行させなければならない。今回はその絶好の機会であり、「構造的な賃金引上げ」を実現しないといけない。その意味で、経団連は企業の責務として、物価高に負けない賃金引上げを働きかけていきたい。そのためには、働き手の約7割を雇用する中小企業にまで賃金引上げのモメンタムが広がっていく必要がある。適切な価格転嫁が日本のサプライチェーン全体で起きることが理想であり、経団連は引き続き、パートナーシップ構築宣言への参画とその実践を積極的に呼びかけていく。
また、日本経済の競争力強化には、成長分野等への円滑な労働移動が不可欠である。働き手のリスキリングなどによりエンプロイアビリティを高めるとともに、働き手のエンゲージメントを向上させ、人材が生き生きと活躍できるよう、硬直的な労働市場を円滑な労働移動に適したものへと変えていく必要がある。