一般社団法人 日本経済団体連合会
【経済対策と財政健全化】
Withコロナにおける岸田政権の「新しい資本主義」起動の第一歩として、経済対策を評価している。新しい資本主義実現会議では、賃金引上げを含めた人への投資、人の移動を容易にするリカレント教育やリスキリングを重視している。消費喚起のためには、賃金引上げだけでなく将来不安を取り除くことも必要である。同時に、財政規律を念頭に置くべきであり、コロナ禍からの回復、GX、DXによる社会変容が進む中、PDCAを意識した賢い支出が必要である。
【雇用の流動化】
新卒一括採用や長期・終身雇用などを特徴とするメンバーシップ型雇用は、定めた方向に社内一丸となって目標達成を追求する時には非常に有効である。経済が一層グローバル化し、社会が変容している時代には、多様性や円滑な労働移動を可能にする雇用システムへの見直しが必要である。そうとは言え、ジョブ型雇用への完全転換が必要等と早計に結論づけるようなことは、それこそ多様性を認めない考え方である。メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用を適切に組み合わせる自社型雇用システムを検討していくことがよいと思う。
【原油価格の高騰】
政府として、さらに何ができるか検討中と認識している。エネルギー価格は、安定性と予見可能性が確保されていることが重要である。原油価格は基本的に需給で決まる。また、一般的には価格が上昇すれば、新規参入や供給量が増えるが、脱化石燃料の流れの中、需給が締まっている。
【賃金の引き上げ】
経団連はかねてより、好業績を維持している企業に対し、重要なステークホルダーである働き手に適切に還元しようと呼びかけている。岸田政権で、賃上げ税制が検討されていることはその意味でありがたい。実務を考えれば、わかりやすくて使いやすい制度にしてほしい。
【エネルギーミックスにおける原子力】
日本の2030年度の電源構成において、原子力発電は20~22%程度と見込まれている。今後、自然体では原発の設備容量が減少していくと見通される中で、再生可能エネルギーで全てを代替することは難しい。原子力は今後も必要であり、安全性向上に向けた研究開発、必要な人材の確保も求められる。日本の置かれた事情を考慮した科学的・客観的な議論を行うことが不可欠である。
【日中関係】
いかなる時代、状況であっても、民間経済外交をしっかりと進めることは欠かせない。政治の世界は、時に大きく振れることもある。グローバル経済において完全なデカップリングはありえず、地球温暖化や新型コロナウイルス感染症などのグローバル課題の解決に向け、日中両国の協力・連携を、競争と協調(Competition with Cooperation)の下で進めていかなければならない。経団連はこうした考えから、今年も日中CEO等サミットをオンラインで開催する計画である。