一般社団法人 日本経済団体連合会
【賃金引き上げ】
賃金引き上げについては、各企業が、社内外の状況、自社の支払能力、労働組合との真摯な話し合いを通じ、賃金決定の大原則に則って対応を決めるものである。重要なステークホルダーである働き手に対する分配は、企業としては当然とのスタンスである。経団連は来月公表する2022年版の経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)で、業績が回復した企業や好業績な企業に対し、賃金引き上げに向けた積極的な検討を呼びかける。政府の賃上げ税制はありがたく、利便性が高い制度を期待するが、それによって賃金引上げを判断するものではない。経団連は賃金引き上げにおいて、自らの責務を果たす所存である。賃金引き上げを個人消費の拡大につなげる好循環がカギであり、そのためには将来不安の払拭が必要である。
〔連合の2022春季生活闘争方針について問われ〕人への投資を重視する点で、経団連と政府、連合の考えは一致している。しかし、企業業績に大きなばらつきが生じている中、連合は目安とは言え、一律4%の引き上げ要求を掲げている。経団連は一律的な引上げではなく、自社の実情に適した対応を呼びかけていく。
【日本経済】
中間決算等において、とりわけ製造業において好業績が目立ったが、飲食、観光等を含む対面型のサービス産業は低迷した。足元では、政府の新型コロナウイルス感染症対策が奏功し、こうした業種の業績も上向きつつある。来年は期待が持てる一方、インフレやモノの供給不足に懸念がある。国民のワクチン接種率は8割近く、12歳以上では9割近くに届く勢いである。今後の3回目接種、科学的知見に基づく水際措置により、第5波と同じような波を防ぎ、社会経済を回していけると期待している。
【税財政改革の方向性】
国際課税ルールで法人税の最低税率が15%と定められ、過度な競争がなくなることは画期的である。日本の法人税率は下がってきてはいるが、世界的に見れば、まだ高い水準である。
また、現下はコロナ対策、DXやGXの推進により財政出動局面にある。DXやGXは国内設備投資であり、これを成長と分配の好循環につなげることが「新しい資本主義」である。コロナ禍にあっては、ワイズスペンディングで財政的な手当てをしっかりすることが不可欠である。無論、中長期的に財政健全化を進めるべきであり、これは「成長と分配」と矛盾するものではない。
【人権問題】
〔北京オリンピックに対する諸外国の外交的ボイコットの動きについて問われ〕経団連は企業行動憲章で人権の尊重を掲げている。今月、企業行動憲章実行の手引き「第4章 人権の尊重」を改訂するとともに、実務担当者向けの「人権を尊重する経営のためのハンドブック」を策定し、公表する。経団連は会員企業に対して、人権尊重の一層の推進を呼びかけていく。