一般社団法人 日本経済団体連合会
【新しい資本主義実現会議】
「新しい資本主義」と、経団連が「。新成長戦略」で掲げた「サステイナブルな資本主義」のコンセプトが軌を一にしていることから、同戦略の内容を、新しい資本主義実現会議(以下、資本主義会議)で実現したい。行き過ぎた資本主義により、格差の拡大や、気候変動に伴う生態系の崩壊など様々な副作用が生じており、その弊害を今回のパンデミックがさらに深刻化させている。新しい資本主義の下、世界が受けているこれらのダメージから回復していかなければならない。
格差の解消にあたっては、経済成長が最優先となる。日本全体の平均所得が下がる中では、格差是正の手を講じても、所得は低いままである。従って、経済のパイを拡大して一人当たり所得を上げる必要がある。安倍政権、菅政権でも格差是正に取り組んできた。岸田政権にはこれを一層積極的に推し進めるべく、成長戦略を策定・遂行していただきたい。
【財政健全化】
財政健全化は日本の経済社会にとって最重要課題である。政府は、2025年度プライマリーバランス黒字化という目標を堅持したうえで、今年度中に目標年次を検証・確認するとしている。ただ、経済あっての財政であり、現下の状況を踏まえれば、財政出動が求められる局面は続く。中長期的な時間軸で財政規律は維持すべきであるが、必要に応じワイズスペンディングで財政出動をしなければならない時もある。
【原油価格の高騰】
原油価格の高騰は、コロナ禍の下で経済活動が再開する過程で、原油需要が急増する一方で、OPECやその他の産油国が増産ペースを据え置いていることが背景にある。加えて、中東情勢の不安定化、温暖化に配慮した新たな油田開発の抑制といった状況を踏まえると、今後暫く、原油価格は高止まりするのではないか。
【金融所得課税】
〔岸田総理が金融所得課税の見直しを先送りしたことについて問われ、〕分厚い中間層を構築すべく、各種分配政策がある中で、金融所得課税の見直しは、国民に分りやすく、かつシンボリックな政策である。ただ、政策の優先順位付けをすると、金融所得課税の見直しといったようなことは、マーケットとよく対話して、じっくり取り組むべき課題であることから、来年度税制改正としては見送るべき、と総理が判断されたのではないか。
【四半期開示】
〔岸田総理が四半期開示の見直しを表明したことについて問われ、〕長期的な視点に立った企業経営の環境整備を行う観点で発言されたと理解している。四半期開示は企業と投資家との建設的な対話のツールであるものの、四半期短信と四半期報告書の両方ということについては、重複感もある。いずれにせよ、急激な制度変更はマーケットに不要な混乱をもたらすことから、慎重に検討を進めるべきである。
【賃金の引き上げ】
賃金の引き上げは、生産性向上により収益が増えた場合に実施するのが基本である。そうした企業に対し、経団連はかねてより経労委報告等を通じて実施を働きかけている。
日本の労働生産性を上げるためには、とりわけ、わが国企業数のほとんどを占める中小企業の生産性向上が不可欠である。同時に、収益が損なわれないよう、取引価格の適正化が肝要である。経団連は、政府が推進している「パートナーシップ構築宣言」の取組みに協力するよう呼びかけており、手応えを感じている。政府には引き続き、生産性向上に資する支援策の拡充など環境整備を求めたい。
【ビジネスと人権】
自由や民主主義、法の支配と並んで、人権は普遍的価値である。企業は社会的存在であり、社会規範をよく認識して活動しなければならず、人権にも当然、注意を払うべきである。他方、人権問題の範囲は広く企業の取り組みだけで対応困難なこともままあることから、諸外国における人権に係る情報の提供など、政府の支援や助言も必要である。経団連は、企業行動憲章に「人権の尊重」を掲げている。年内目途に企業行動憲章実行の手引きを改訂するとともに、実践に役立つハンドブックを作成する予定である。
【TSMCの日本工場建設】
現下、経済安全保障は最重要課題の一つであり、like-minded countries(価値観を共有する国々)と協力して、重要な技術やエッセンシャル・プロダクトのサプライチェーンを構築することは非常に大事である。その一環として、TSMCによる日本工場の新設は、歓迎すべきことである。先々、パワー半導体にも期待できる。日本は今なお、素材や装置、部品等の開発、生産に強みをもっている。TSMCの誘致は、こうした日本の強みに磨きをかけてくれるものではないか。
【北京冬季オリンピック・パラリンピック】
〔北京冬季大会への期待を問われ、〕東京大会は、コロナ禍にあっても人々が力を合わせ、やり遂げる姿勢を内外に示し、多くの方々に感動を与えた。北京大会でも、こうしたことが受け継がれることを期待している。また、北京大会の開催にあたっては、東京大会の感染症対策の経験・知見を十分に活かしてほしい。