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Policy(提言・報告書)  環境、エネルギー 「第7次エネルギー基本計画(案)」のパブリックコメント募集に対する意見

2025年1月24
一般社団法人 日本経済団体連合会
資源・エネルギー対策委員会
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今般提示された第7次エネルギー基本計画の案は、S+3Eの大原則のもとで、わが国の国民生活・事業活動、ひいては活力ある経済社会の実現を支えるエネルギー政策の実現につながるものであり、総じて評価できる。わが国が置かれたエネルギー情勢に係る認識や、再生可能エネルギー・原子力といった脱炭素電源の最大限の活用を含む対応の方向性については、経団連の考え方と軌を一にしている。

そのうえで、個別の点について、下記の通り意見を述べる。その内容を反映した本計画に従って、脱炭素電源等に対する大型投資の円滑化やトランジション期におけるエネルギー安定供給の確保を含め、諸課題に関する施策の具体化・展開を加速することを期待する。

【01】
[該当箇所]

Ⅰ.はじめに(p.4 l.15-17、p.4 l.35-p.5 l.2)

Ⅲ.3.DXやGXなどの進展に伴う電力需要増加の可能性(p.11 l.37-40)

[意見]

「データセンター、重要な戦略物資である半導体、鉄鋼や化学などの素材産業といった将来の成長産業は、いずれも国際的に遜色ない価格で安定した品質の脱炭素エネルギー供給を必要としている」、「我が国の産業立地競争力の観点からは、国際的に遜色のない価格で安定した品質のエネルギー供給が不可欠であり、〔……〕脱炭素エネルギーの確保に向けた事業環境整備を進めていく必要がある」「将来の電力需要の増加に対しては、脱炭素電源を拡大することで対応する必要があるところ、十分な脱炭素電源が確保できなかったが故に、国内においてデータセンターや半導体工場などの投資機会が失われ、我が国の経済成長や産業競争力強化の機会が失われることは、決してあってはならない」との記述は極めて重要であり、賛同する。

このような認識に基づき、再生可能エネルギー、原子力といった脱炭素電源の最大限の活用を図るべきである。

[理由]

案にも記載される通り、脱炭素投資を成長に結びつける政策的動きが海外で高まる中、わが国が産業を自国に維持・確保し経済成長できるかは、再生可能エネルギー、原子力といった脱炭素電源を十分確保できるかにかかっている。脱炭素電源が十分確保できなければ、国内投資や経済成長の機会を逸することとなり、雇用の確保や賃上げも困難となり、国民生活にも大きな影響を及ぼすこととなる。


【02】
[該当箇所]

Ⅲ.5.エネルギー政策と産業政策の一体化(p.12 l.36-p.13 l.19)

[意見]

エネルギー政策は、産業政策、地方創生、経済外交をはじめとするわが国の他の重要課題とも密接に関係する。総合的な検討に基づく最適な政策の立案・実行により、課題解決を図っていく旨を追記すべきである。

[理由]

GXは経済社会全体の変革であり、エネルギー政策・産業政策のみならず、わが国が直面する他の社会課題とも関連する。産業政策に関する欧米の例が引用されているが、わが国として広く関係する省庁内・省庁間で全体の最適な政策を実施するためには、更なる強力な推進力が不可欠と考えられるため。


【03】
[該当箇所]

Ⅳ.エネルギー政策の基本的視点(S+3E)(p.14 l.3-p.15 l.41)

[意見]

S+3Eを基本的視点として掲げることに賛同する。カーボンニュートラルを目指すなかで、3Eの間でトレードオフが発生することも想定されるが、p.14 l.9-10に記載の通り、「3つのE(エネルギー安定供給、経済効率性、環境適合性)の最適なバランスを追求していくこと」が不可欠である。

[理由]

カーボンニュートラルという極めて野心的な目標の実現には相応のコストが必要である。「脱炭素化に向けた取組に伴うコスト上昇を最大限抑制するべく、経済合理的な対策から優先して導入する」(p.15 l.25-26)としても、例えば地球環境産業技術研究機構(RITE)の試算によれば、イノベーションが順調に進むシナリオであっても、2040年時点で年額5兆円超のエネルギーシステムコスト増が発生する(総合資源エネルギー調査会 第68回基本政策分科会 参考資料1 p.31)。

電力需要増、国際エネルギー市場のひっ迫懸念、各国の産業政策の強化等、昨今の状況変化のなか、各種の気候変動対策のための施策を展開するうえでは、こうしたコスト増が国民生活やわが国企業の競争力、経済成長に与える影響を適切に勘案することがこれまで以上に重要である。


【04】
[該当箇所]

Ⅴ.1.(1)エネルギー政策の基本的考え方(p.16 l.7-p.17 l.17)

Ⅴ.3.(1)① 総論(p.23 l.6-29)

[意見]

本項に示された状況認識と考え方全般に賛同する。提示された案の記述を維持すべきである。

とりわけ、「特定の電源や燃料源に過度に依存しないようバランスの取れた電源構成を目指していく」との前提のもと、「再生可能エネルギーと原子力を二項対立的な議論ではなく、ともに最大限活用していくことが極めて重要」との記述が重要である。第6次エネルギー基本計画に記載された「可能な限り原発依存度を低減する」との記述を盛り込むことは適切でない。

[理由]

わが国は天然資源に乏しい島国であり、化石燃料の埋蔵に乏しいのみならず、太陽光・風力の大幅拡大や周辺国との重層的な国際連系線ネットワークの構築にも困難がある。一方で、人口密度が高く工業化が進んだわが国は、国土面積に比して大きなエネルギー需要を有し、また工業製品の品質を担保するための質の高い電力を必要としている。こうした厳しい供給制約を踏まえれば、多様なエネルギー源のベストミックスを追求することが必要不可欠である。国際情勢や技術開発のリスクが顕在化することへの備えも求められる。

こうした前提のもと、特に脱炭素電源に関しては、低コスト・安定供給・事業規律の3点を満たした再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、3Eのバランスに優れた原子力を最大限活用していくことが欠かせない。

この点、第6次エネルギー基本計画に記載された「可能な限り原発依存度を低減する」との記述は、原子力が将来縮小の一途をたどるとの認識を生み、10年以上の新設案件不在のなか、わが国の原子力の基盤たる技術・人材・サプライチェーンの維持に対する企業の投資意欲の減退や学生の減少につながってきた。結果として、そうしたわが国原子力産業の重要な基盤が損なわれつつある中、政府が「依存度の低減」の記載を継続すれば、将来的に必要な規模の原子力を活用するうえで大きな阻害要因となる。

経団連がエネルギー政策に関心の高い会員企業の役員クラスを対象に実施した「電力問題に関するアンケート」(2024年10月15日公表)においては、設問回答企業数155社のうち、86%の企業(133社)が再稼働の必要性を認識、68%の企業(106社)が再稼働に加えて、リプレース・新増設の必要性を認識している。


【05】
[該当箇所]

Ⅴ.2.(1)需要側の省エネルギー・非化石転換(p.18 l.12-16)

[意見]

電源の脱炭素化と組み合わせた電化と、非電力分野における燃料の低炭素化・脱炭素化に並行して取り組むことを明確化すべきである。例えば、当該箇所の記述を「電化が可能な分野においては、S+3Eのバランスを確保しつつ電源の脱炭素化と電化を推進していくことが求められる。併せて、2050年カーボンニュートラル実現に向けては、電化が困難であるなど、脱炭素化が難しい分野においても脱炭素化を推進していくことが求められる。そうした観点を含め、非電力分野においては、天然ガスなどへの燃料転換、さらには水素等やCCUSなどを活用した対策を進めていく必要がある」等と修正することが望ましい。

[理由]

需要側の電力・燃料利用に関しては、コスト受容性といった、それぞれの需要特性等を踏まえ、需要家のニーズに最も適した選択を許容するため。


【06】
[該当箇所]

Ⅴ.3.(1)③ 事業環境整備・市場環境整備(p.24 l.13-p.25 l.4)

[意見]

脱炭素電源の投資回収の予見性を高める制度措置や市場環境整備、ファイナンス円滑化等に取り組むことに賛同する。

[理由]

わが国のGXに欠かせない大型脱炭素電源等の整備には、長期にわたる多額の投資が求められるが、民間の事業者・金融機関のみでのリスクテイクには限界があるため。


【07】
[該当箇所]

Ⅴ.3.(1)③ 事業環境整備・市場環境整備(p.24 l.21-22)

[意見]

例えばp.24 l.21-22に「透明性と規律を確保したうえで、事業期間中の市場環境の変化等に伴う収入・費用の変動に対応できるような制度措置や市場環境を整備する」と下線部を加筆するなど、投資環境の予見性を高める制度措置の整備にあたり、透明性と規律が確保された制度とすることを明確化すべきである。

[理由]

脱炭素電源の投資回収の予見性を確保する施策は極めて重要だが、あくまでもリスクを分担し、電源の経済性を発揮させるための支援措置とすべきであり、かつてのFIT制度のように過大な補助を与える仕組みとなることがあってはならない。こうした観点を明確化する記載が必要と考えるため。


【08】
[該当箇所]

Ⅴ.3.(2)①(ア)基本的考え方(p.25 l.10-25)

[意見]

追加性ある再生可能エネルギーの導入拡大を含め、再生可能エネルギーの利用を希望する需要家の電源アクセス確保に取り組む方針を明記すべきである。

[理由]

カーボンニュートラルへの取り組みが世界的に加速するなかで、取引先や金融機関等から再生可能エネルギーの利用を求められる事例が増加している。経済安全保障上の重要物資である半導体等においても、再生可能エネルギー100%での製造を求められるケースが生じている。特に、例えば国際イニシアティブ・RE100が、企業の調達する再生可能エネルギーが原則運転開始15年以内であることを求めるようになっている。こうした要請に直面する企業は、十分な量の再生可能エネルギーが確保できなければ、契約やファイナンスの確保に支障を来たし、場合によっては生産基盤を再生可能エネルギーが豊富な国・地域へ移転せざるを得ない事態にも陥りかねない。

主要な輸出品や重要物資の国内生産を確保する観点から、希望する需要家の再生可能エネルギーへのアクセスを十分確保する必要がある。


【09】
[該当箇所]

Ⅴ.3.(2)①(ウ)国民負担の抑制等(p.27 l.12-14)

[意見]

再生可能エネルギー導入に伴う国民負担の抑制に向けた具体策として、PPAのさらなる促進などを含め、FIT・FIP支援から自立した導入を推進する旨を追記すべきである。

[理由]

l.10-11において、再生可能エネルギー導入に伴う国民負担の抑制策として、「自立的に導入が進む状態を早期に実現していく」としていることは妥当である。一方で、その具体策を挙げているl.12-14の段落では、FIT・FIP入札制の活用、FIT・FIP認定の失効制度等の活用を挙げるにとどまっており、非FIT・非FIP再生可能エネルギーの導入促進への言及がないが、再エネの主力電源化にあたり、自立した電源拡大の具体策の検討が急務である。


【10】
[該当箇所]

Ⅴ.3.(2)①(エ)(a)総論(p.27 l.21-22)

[意見]

「再生可能エネルギーを最大限活用する観点から、社会的費用を最小化する形で、その出力制御量の抑制に取り組む」と追記するなど、出力制御対策の実施にあたり費用対便益を考慮することを明確化すべきである。

[理由]

再生可能エネルギーの出力制御を抑制すべきか否かは、それにより得られる便益と、出力制御抑制対策に要するコストとの比較衡量によって判断されるべきであるため。


【11】
[該当箇所]

Ⅴ.3.(2)②(イ)屋根設置太陽光発電(p.29 l.12-14)

[意見]

工場・オフィス等の民間部門の屋根設置型太陽光に関し、FIT・FIP制度の調達期間・交付期間のあり方を検討する際には、足元の国民負担に配慮しつつ行う旨を明記すべきである。

[理由]

総合資源エネルギー調査会 第67回基本政策分科会の参考資料2 p.110, 116の記載内容を踏まえれば、当該箇所の記載は、投資回収の早期化等の観点から、FIT調達価格ないしFIP基準価格を引き上げると同時に調達期間・交付期間を短縮する措置について検討する趣旨と理解される。

こうした措置は、中長期的な国民負担の総額が変わらないとしても、足元の再生可能エネルギー賦課金額に対する上昇圧力となる。エネルギーコストの高止まりが需要家に負担感を与えている現状も踏まえれば、少なくとも、検討にあたり足元の国民負担にも配慮すべきであるため。


【12】
[該当箇所]

Ⅴ.3.(3)原子力発電(p.33 l.31- 全体)

[意見]

原子力について、2040年、2050年における導入容量の目標を示すべきである。

[理由]

洋上風力等については、40年、50年の容量目標が示されており、原子力についても同様に設備容量の目標を掲げることは、再エネとともに原子力を最大限活用するとの政府の姿勢を明確に示すうえで重要である。また、原子力の先行きを政府が可能な限り明確化することが、技術・人材・設備の国内での維持・拡充に向けて産業界が計画的な投資を判断するうえで重要となるため。


【13】
[該当箇所]

Ⅴ.3.(3)②(ア)原子力政策の出発点(p.34 l.23-25)

[意見]

安全性の確保を大前提に、国として、原子力規制、とりわけ安全審査プロセスの合理化・効率化・迅速化に取り組む旨を加筆すべきである。

[理由]

原子力発電所の再稼働は着実に進展しているものの、審査が長期化しているプラントもある。停止期間が延長されることで、事業の予見可能性の低下から投資や人材の確保が難しくなり、安全性の確保が困難になるおそれもある。

こうした状況に鑑み、規制当局たる国が、安全性確保に資する効果的かつ効率的な審査のあり方を追求する視点に立ち、審査体制の拡充・人材確保を図ることで、安全確保に係る基盤を強化することが可能となるため。


【14】
[該当箇所]

Ⅴ.3.(3)②(ア)原子力政策の出発点(p.34 l.23-25)

[意見]

安全性の確保を大前提として原子力のさらなる活用を進めていくにあたり、国として、原子力規制庁の業務負荷の増大に備えた体制強化を検討する旨を加筆すべきである。

[理由]

原子力規制をめぐっては、これまで同様の既設炉の審査・検査対応に加え、今後、次世代革新炉の設置に向けた検討も加速していくことが求められる。想定される業務負荷に鑑みれば、安全確保の観点からも、規制当局の能力増強が必要と考えられるため。


【15】
[該当箇所]

Ⅴ.3.(3)②(イ)立地地域との共生・国民各層とのコミュニケーション(p.35 l.31-33)

[意見]

支援のあり方を高度化させていくにあたり、脱炭素電源の立地が地域の競争力に繋がるとの認識のもと、そうした競争力を強化する観点から企業・自治体へのインセンティブとなる措置を講じていくとの方針を盛り込むべきである。

[理由]

関連が強い本箇所に、GX2040ビジョン(案)に盛り込まれたGX産業立地の観点を明記することで、その具体化に資する。


【16】
[該当箇所]

Ⅴ.3.(3)②(エ)既設炉の最大限活用(p.39 l.27-38)

[意見]

既設設備の運転期間に関しては、2023年の改正で高経年化した原子炉に対する規制が厳格化された原子炉等規制法のもと、科学的・技術的観点から安全性が評価・担保されることを前提に、特定の年限で区切ることなく運転可能とすることが望ましい。

[理由]

設備の安全性は、科学的・技術的観点からの評価により担保されるべきものである。安全性が確認された設備は最大限活用することが合理的であるため。


【17】
[該当箇所]

Ⅴ.3.(3)②(オ)次世代革新炉の開発・設置(p.40 l.9-15)

[意見]

次世代革新炉の開発・設置に関し、廃炉を決定した原子力発電所を有する事業者の原子力発電所のサイト内での建て替えを対象として具体化を進めていくとの方針は、重要な前進であり、評価する。

さらに言えば、安全性の確保や地元の理解を大前提とすれば、事業者やサイトに関してこのような追加要件を課す合理的必要性はなく、追加要件を排除することを検討することが望ましい。

[理由]

今後、脱炭素電源に対するニーズが拡大していく見通しの中、既存の原子力発電所の設備容量が2040年から急減すること、新規建設には十数年を要すること等を踏まえれば、次世代革新炉への円滑な建て替えを進めるうえでは、その具体化を早急に実現する必要がある。

なお、事業者やサイトに関して追加要件を課すことなく具体化を進めるとしても、安全性を確保し、地元の理解を得ることが設置の大前提である。また、わが国全体として「特定の電源や燃料源に過度に依存しないようバランスのとれた電源構成を目指」す(p.23 l.17-18)という方針を掲げる以上、原子力への過度な依存につながるという懸念はあたらない。

経団連がエネルギー政策に関心の高い会員企業の役員クラスを対象に実施した「電力問題に関するアンケート」(2024年10月15日公表)においては、設問回答企業数155社のうち、68%の企業(106社)が再稼働に加え、リプレース・新増設を進める方向で検討すべきと回答した。


【18】
[該当箇所]

Ⅴ.3.(3)②(キ)国際的な共通課題の解決への貢献(p.41 l.29-32)

[意見]

原子力利用を検討する新興国を中心とした諸外国に対し、わが国として、プラントの建設・運転保守や法規制制度の整備を支援していく方針を明確化すべきである。

[理由]

わが国として、原子力利用を希望する国、とりわけ新興国において、プラントの建設・運営が可能となるよう支援を行うことは、グローバルに原子力の適正な利用とそれによる排出削減を促進するうえで重要である。法制度に関しては、IAEAの基準が存在しているものの総論的な内容であり、現実に制度整備を行う際には、わが国の知見に基づいた支援が重要な役割を果たしうる。


【19】
[該当箇所]

Ⅴ.3.(4)①総論(p.41 l.40-p.42 l.30)

[意見]

本項に示された火力発電に係る対応方針、とりわけ非効率な石炭火力を中心に発電量(kWh)を減らしていくとともに、安定供給に必要な設備容量(kW)を維持・確保していくとの方向性に賛同する。

[理由]

エネルギー政策の要諦はS+3Eである。現状、火力が供給力、調整力、慣性力・同期化力等を総合的に提供し、電力システムにおいて重要な役割を担っていること、また、火力に相当程度依存している現状を踏まえれば、カーボンニュートラルの実現に向け、火力依存度の低減と火力の低炭素化・ゼロエミッション化に取り組むうえでは、時間軸を持って円滑なトランジションを図ることが欠かせない。


【20】
[該当箇所]

Ⅴ.3.(4)①総論(p.41 l.9-10)、③石炭火力(p.43 l.33-34)

[意見]

「非効率な石炭火力のフェードアウトを進める」との方針は重要であるが、「供給力不足の懸念等から、非効率な石炭火力のフェードアウトは必ずしも十分に進展していない」との記述は削除すべきである。そのうえで、当該箇所を「過度な退出による供給力の不足が原因で安定供給に支障をきたすことがあってはならない」といった記載に変更すべきである。

[理由]

p.42 l.16-20においては、非効率な石炭火力のフェードアウトを進めるにあたり、発電設備、燃料サプライチェーンの維持等への留意や、低稼働電源のkW維持に必要な制度的措置等の検討を行う旨が記載されている。

しかしながら、既にファイナンス面を含め、燃料サプライチェーン・設備容量の維持に経済合理性が伴わなくなっている。カーボンプライシングの導入等によって石炭火力の経済性が今後さらに低下し、市場原理のもとで発電量(kWh)がますます減少していくことが想定される。

足もとで国として安定供給に必要な石炭火力を維持する姿勢が内外に明確に示されなければ、退出圧力がさらに強まり、実際に過度な退出が加速し、安定供給へ支障をきたすことが懸念される。非効率な石炭火力のフェードアウトに向けた方策のみならず、必要な容量(kW)を確実に維持するための対応を重視する必要がある。


【21】
[該当箇所]

Ⅴ.3.(4)②LNG火力(p.43 l.2-6)

[意見]

LNG火力の燃料転換の候補として、水素と併記する形でアンモニアを明記すべきである。

具体的には、「水素・アンモニアやCCUS等を活用したLNG火力の脱炭素化についても、長期脱炭素電源オークション等を通じて促進する。水素・アンモニアを活用した発電について、燃焼器の技術開発や発電実証をグリーンイノベーション基金も活用しながら進めており、国内外の市場獲得も睨みながら社会実装を目指していく」と加筆すべきである。

[理由]

グリーンイノベーション基金を活用しながらアンモニアガスタービンの開発が進められているほか、コスト検証WGの取りまとめにおいてもアンモニア専焼技術としてGTCCをベースとする試算が取り上げられているなど、ガスタービンにおけるアンモニア利用は有望な脱炭素化技術であり、カーボンニュートラル燃料の利活用の幅を広げることで、脱炭素化とともにエネルギー安定供給にも貢献する。


【22】
[該当箇所]

Ⅴ.3.(4)②LNG火力(p.43 l.20-23)

[意見]

LNG長期契約の確保の促進のみならず、戦略的余剰LNG(SBL)の拡充その他、LNGの確保の具体策についても、検討対象として言及すべきである。

[理由]

トランジション期における重要な資源であるLNGは世界的に需要が高まることが見込まれるなか、SBLについて、わが国の年間LNG需要に比して量が限られていることへの懸念があるため。


【23】
[該当箇所]

Ⅴ.3.(5)②(イ)局地的な大規模需要の立地を見据えた送配電網の整備(p.45 l.29-34)

[意見]

大規模需要の適地誘導に際し、脱炭素電源の立地が地域の競争力に繋がるとの認識のもと、そうした競争力を強化する観点から企業・自治体へのインセンティブとなる措置を講じていくとの方針を、本箇所にも明記すべきである。

[理由]

関連が強い本箇所に、GX2040ビジョン(案)に盛り込まれたGX産業立地の観点を明記することで、その具体化に資する。


【24】
[該当箇所]

Ⅴ.4.(1)基本的考え方(p.48 l.12-15)

[意見]

次世代エネルギーの社会実装に向け、海外における資源や適地の獲得競争にわが国が打ち勝っていくための支援や施策を講じる旨、明示すべきである。

具体的には、「グリーンイノベーション基金事業等で世界に先行した技術開発により競争力を磨くとともに、海外の資源・適地の獲得競争に勝つための施策や支援を講じ、世界の市場拡大を見据えて先行的な企業の設備投資を促していく」等と追記することが考えられる。

[理由]

同頁l.11で指摘されている通り、次世代エネルギーの開発に向けて、各国の「資源や適地の獲得競争が起こり始めている」状況にある。こうしたなかで、埋蔵資源や再生可能エネルギー適地に乏しいわが国が「ビジネスで勝つ」ためには、国として戦略的に政策上の後押しをすることが重要である。


【25】
[該当箇所]

Ⅴ.5.(2)① 総論(p.52 l.27-29)

[意見]

天然ガスを「カーボンニュートラル実現後も重要なエネルギー源である」と位置付けることに賛同する。政府には、こうした天然ガスの位置づけが長期にわたる確固たる認識であることを国内外に発信していくことを期待する。

[理由]

カーボンニュートラルの実現後も重要なエネルギー源として天然ガスを活用していくとの位置づけは、現実的かつ円滑なトランジションの観点から適切である。第7次エネルギー基本計画において天然ガスの重要性を高めたことを、日本政府が内外に確固たる姿勢として示すことで、必要量の確保に向け、産ガス国との交渉や、関係事業のファイナンス確保の後押しとしても効果を発揮することが期待される。


【26】
[該当箇所]

Ⅴ.5.(2)③ LNGの安定供給確保(p.53 l.33-38)

[意見]

わが国企業の外・外取引を含めLNG市場の取引の厚みを増すことが、わが国の安定調達に資する旨を明記すべきである。

LNG上中流権益の確保はもとより、日本向け輸出を伴わない天然ガス・LNG開発への支援や、トランジション燃料としての天然ガスの重要性についての国際的な理解促進、天然ガスの利用拡大を図る仲間づくりの観点からの政府間連携の強化等に取り組む旨も加筆することが望ましい。

[理由]

天然ガス・LNGの開発をめぐっては、開発主体のみならず、エンジニアリング企業や機器メーカー、金融機関等、多くの関係者が存在している。経済性ある価格での安定的なLNG調達を実現するためには、各主体がそれぞれ天然ガス・LNG事業を継続し、必要な技術・人材への投資を継続していく必要があり、そのうえでは、一定規模の市場が存在することが前提となる。逆に市場が縮小すれば、事業規模の縮小や撤退により企業間競争が働きにくくなり、LNGの価格上昇やLNGの低炭素化技術の開発遅滞に繋がりかねない。


【27】
[該当箇所]

Ⅴ.5.(3)② 備蓄の確保(p.54 l.36-37)

[意見]

石油備蓄の確保に言及するにあたっては、国内における石油精製能力の確保にも併せて言及すべきである。

具体的には、「石油備蓄は重要であり、石油備蓄水準を維持する。併せて、備蓄の有効性を担保するために必要な国内石油精製能力を確保する」等と追記すべきである。

[理由]

現行の石油備蓄制度は原油備蓄を中心としており、放出された備蓄を需要家に供給するためには石油精製能力の確保が欠かせない。精製能力の確保について明示し、国内需要の減少に伴い縮小基調にある石油精製能力をわが国が失うことがないように備える必要がある。


【28】
[該当箇所]

Ⅴ.5.(5)石炭(p.57 l.36-p.58 l.5)

[意見]

「石炭の安定供給は引き続き重要である」との記述および相対的な地政学リスク・熱量あたりの単価の低さ、保管の容易性といった理由に賛同する。

加えて、「トランジション期に必要な量の石炭を確保する」との方針を明記するとともに、石炭サプライチェーンの維持のため、ファイナンス面を含め、関連事業の確保・維持と投資保護についての具体策を示すことが不可欠である。自主開発比率向上・複数年タームの契約の比率の計測と必要な施策の検討に加え、投資仲裁の仕組み(ISDS)を有する投資協定・経済連携協定の新規締結の加速・規律強化等、既存の取り組みを含めて具体策を明記すべきである。

[理由]

近年、石炭輸出国における規制強化や石炭バリューチェーンへのファイナンスに対する国際的圧力が高まっている。2024年12月に採択された改訂エネルギー憲章条約においては、化石燃料について投資保護対象からの除外を認める中身が含まれた。こうした状況に鑑みれば、カーボンニュートラルの実現に向け、非効率石炭火力のフェードアウトを軸に石炭依存度の低減を進めていくことを前提としつつも、政府として、必要量の石炭確保の姿勢と具体策を明確にする必要がある。わが国の安定供給に支障をきたすおそれのある海外の動向に政府として毅然と対応する姿勢が示されなければ、権益・サプライチェーンの維持への民間事業者・金融機関のインセンティブは低下する一方となり、安定調達に支障をきたすおそれが引き続き高い。


【29】
[該当箇所]

Ⅴ.6.(3)CCU/カーボンリサイクル(p.60 l.21-36)

Ⅴ.6.(4)CDR(p.60 l.40-p.61-30)

[意見]

バイオマス由来CO2を用いたCCUについても、将来的な課題として検討すべきである。

[理由]

カーボンニュートラルの実現が近づくにつれて化石燃料由来CO2が減少し、CCUによる製品製造のためにバイオマス由来CO2を活用していくことも求められるようになると考えられるため。


【30】
[該当箇所]

Ⅴ.8.(2)①これからの電力システムが目指すべき方向性(p.65 l.21-26)

[意見]

本項に掲げられた「三つの大きな課題」の中にも、「国際的に遜色ない価格での電気の供給」が求められる旨を盛り込むべきである。

[理由]

本項には「国際的に遜色ない価格での電気の供給の重要性も高まっている」との状況認識が明記されているものの、電力システム改革を通じて対応すべき課題としては「安定供給や脱炭素化、物価上昇等による価格への影響を抑制しつつ、需要家に安定的な価格水準で電力を供給できる環境の整備」との記載に留まっており、海外との相対的な価格水準の抑制という視点が欠落しているため。


【31】
[該当箇所]

Ⅴ.9.(1)②脱炭素技術の国際展開(p.70 l.32-36)

[意見]

国際的なルール形成に参画・協力する方針に賛同する。

そのうえで、CFPや削減実績量・削減貢献量のみならず、CCU燃料の排出削減価値の評価に係るルール等、排出削減に関わる価値の評価・算定の方法について、より幅広いルール形成を官民連携のもとで主導していく旨を明記すべきである。

[理由]

国際的なルール形成は、わが国の技術を海外展開し、地球規模の排出削減を進めるとともに海外の成長を取り込んでいくうえで不可欠である。

特にCCU燃料に関しては、排出削減価値の評価方法等が国際的に固まっていない状況にある。とりわけ、2026年後半の改定が見込まれるGHGプロトコルの見直しの方向性がカギとなる。

また、技術の進展等を踏まえれば、水素・アンモニア混焼が可能な火力発電設備など、将来の排出削減を可能とする設備の評価方法についても論点となる。


【32】
[該当箇所]

Ⅵ.2.(2)原子力(p.74 l.13-15)

[意見]

「炉型ごとに特徴を有しており、早期の実用化に向けて取組を進めていく」と加筆すること等により、開発の早期化が必要であることを強調すべきである。

[理由]

既に記載されている通り、高速炉、高温ガス炉、核融合炉といった次世代の非軽水炉は、わが国のGXに大きな役割を果たすと考えられる。一方で、国際的な開発競争は激化しており、可能な限り早期の社会実装が求められる状況にあるため。


【33】
[該当箇所]

Ⅵ.2.(2)原子力(p.75 l.10)

[意見]

フュージョンエネルギーについて、2030年代の発電実証を目指すことを明記すべきである。

[理由]

核融合は、人類にとってのエネルギー制約を大きく変化させうる技術であり、国際的な開発競争が本格化しつつあることも踏まえれば、わが国としても開発を加速していくことが求められる。こうしたなか、2024年6月に閣議決定された『新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版』においては「2030年代の発電実証を目指す」と明確に謳われていることから、エネルギー基本計画において平仄を合わせるべきと考えるため。


【34】
[該当箇所]

Ⅵ.2.(9)資源循環産業(p.78 l.1-5)

[意見]

「〔……〕再生材の質・量の確保のため、選別・リサイクル技術や再生材の品質向上技術などの技術革新を続け、トレーサビリティの向上に取り組みつつ資源循環ネットワーク形成・拠点構築を進め、高度な資源循環システムを実現することで、環境と経済の好循環をさらに推進する」と加筆すべきである。

[理由]

効率的な資源循環ネットワークを形成するためには、トレーサビリティの向上も重要であるため。


以上

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