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Policy(提言・報告書)  環境、エネルギー 「地球温暖化対策計画(案)」のパブリックコメント募集に対する意見

2025年1月24
一般社団法人 日本経済団体連合会
環境委員会
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今般提示された地球温暖化対策計画(案)では、わが国が国際公約とする2050年カーボンニュートラルの実現を見据え、2035年度60%減・2040年度73%減という野心的な温室効果ガス削減目標が掲げられるとともに、目標達成に向けた施策や各主体の取組方針等が示された。本案の内容にそってわが国の気候変動対策が着実に進むことを期待する。

そのうえで、個別の点について下記の通り意見を述べる。

【01】
[該当箇所]

第2章.第1節 我が国の温室効果ガス削減目標(p.19, 5-8)

[意見]

今般提示された2050年ネット・ゼロの実現に向けた直線的な削減経路と整合的な目標(2035年度60%減、2040年度73%減)をわが国の次期NDC目標とすることに賛同する。

[理由]

革新的技術の開発はもとより、そのコストが低減して社会全体に普及し、削減効果が発揮されるまでには相当な時間を要する。この点を踏まえれば、直線よりも緩やかな削減経路(上に凸)を想定することが理にかなっているともいえる。

そのうえで、わが国がG7の一員として1.5℃目標に整合的なNDCの提出にコミットしていること等に鑑みれば、国際社会に対して気候変動対策への野心を示す観点から、本目標は適切である。これは国際的に認められた1.5℃実現経路の幅にも収まっている。

一方、より急速な削減経路(下に凸)を求める声もあるが、これを目指す場合、天然資源や再エネ適地に乏しいわが国のエネルギーコスト水準がさらに上昇し、海外に比して過度な気候変動対策コストを負うことになる。非現実的な目標ありきでその達成に向けて進もうとすれば、国内での生産基盤や雇用の維持が困難になり、世界の経済成長から取り残された日本を将来世代に受け継がせることにもなりかねない。加えて、わが国からのカーボンリーケージを引き起こし、実質的な排出削減に繋がらないため、地球全体の温暖化対策にも寄与しない。責任ある国家目標としては不適切である。


【02】
[該当箇所]

第3章.第2節.1.(1)①.A.(a)○自主行動計画の着実な実施と評価・検証(p.33, 9-11)

[意見]

排出量取引制度の導入を受けて、自主行動計画に係る政府の評価・検証に際しては、事業者の負担が過大とならないような形で実施すべきである。

[理由]

排出量取引制度の本格稼働(2026年度~)に伴い、同制度に基づく排出量の算定・検証・報告等に関わる多大な実務負担が新たに生じることを踏まえて、自主行動計画に係る政府の評価・検証については、事業者負担の軽減を図ることが重要であるため。


【03】
[該当箇所]

第3章.第2節.1.(1)①.B.業務その他部門の取組(p.38, 23-25)

[意見]

リニューアル(改修)による既存建物の省エネ性能向上を積極的に進めることを明記すべきである。

[理由]

2050年度にストック平均でのZEB基準の水準の省エネルギー性能を確保するためには、既存建物のリニューアルによるZEB化が重要であるため。また、建物のリニューアルは省資源にもつながる取組みであり、建材製造時に排出されるCO2の削減にも寄与する。


【04】
[該当箇所]

第3章.第2節.1.(1)①.B.(b)建築物の省エネルギー化(p.39, 7-31)

[意見]

タイトルを「(b)建築物の脱炭素化」に変更し、建築物に関して省エネに留まらない取組を推進すべきである。具体的には、「〇低炭素・GX建材の利用促進」の項目を新たに加えた上で、ライフサイクルでの二酸化炭素削減を図るべく、主要な構成要素である鉄・コンクリート(セメント)について、低炭素・GX製品の普及に向けて、公共建築物における率先した取組・調達を図るとともに、民間建築物での利用拡大に向けた支援措置等を講じていく旨を明記すべきである。

[理由]

建築物の躯体を構成する鉄・コンクリート(セメント)は製造時に外出する二酸化炭素が比較的多く、建物の脱炭素化を進める上で、低炭素・GX建材の利用拡大を図ることは極めて重要である。低炭素・GX建材の利用拡大に向けては、政府の積極的な制度面・資金面の支援措置が必要である。


【05】
[該当箇所]

第3章.第2節.1.(1)①.B.(f)電気・熱・移動のセクターカップリングの促進(p.41, 18-20)

[意見]

「需要側で柔軟性(ディマンドサイドフレキシビリティ)を発揮するEV等、ヒートポンプ式給湯器、燃料電池、コージェネレーション等を地域の特性に応じて導入する」との方向性に賛同する。

[理由]

再エネ導入拡大に伴い重要性が高まる調整力やディマンドリスポンスに資するものであり、更なる普及を図ることが重要であるため。


【06】
[該当箇所]

第3章.第2節.1.(1)①E.(b)脱炭素電源の拡大(p.57, 1-6)

[意見]

今後見込まれる国民負担の上昇を抑制する等の観点から、政策目的に照らしたより効率的な規制体系となるよう、既存の制度等の在り方について総点検を行うべきである。特に排出量取引制度が導入されることを踏まえ、各制度の政策効果を踏まえた関係整理を行うことが不可欠であり、その旨明記すべきである。

[理由]

電力の排出削減をめぐる状況は、業界の自主的枠組みや高度化法・省エネ法における政策的対応が導入された当時から大きく変化している。特に排出量取引制度の導入に伴って、省エネ法・高度化法等の規制が電気事業者や電力需要家に二重の負担を課すこととなったり、各主体が訴求できる環境価値とそのコスト負担とが乖離したりすることがあってはならないため。


【07】
[該当箇所]

第3章.第2節.1.(1)①E.(d)水素社会の実現等(p.62, 16-32)

[意見]

水素の将来的な価格目標や、供給・利用についての具体的な内容を追記すべき。

[理由]

具体的な方向性を明示することで、水素ユーザーにとっての予見可能性を高めることが期待できるため。現行の地球温暖化対策計画では、本案よりも具体的に記載されている。


【08】
[該当箇所]

第3章.第2節.2.(2)(g)GX市場創造(p.83-85)

[意見]

GX投資の予見性を高めるためにGX市場の創造が不可欠である。本案に盛り込まれているGX価値の見える化や需要喚起策などの施策に加え、こうした各種規制・制度的措置の導入時期を明記した具体的なロードマップを策定すべきである。

[理由]

上記ロードマップを示すことで、GX製品・サービスの供給側・需要側共に、中長期的に最適な活動・取組を判断しやすくなる。


【09】
[該当箇所]

第3章.第2節.2.(2)(g)GX市場創造(p.83-85)

[意見]

GX製品の生産に伴うコスト増が確実に製品価格に反映されるとともに、それを購入する消費者がコストアップを受け入れることで、社会全体で公平かつ公正にコストを負担できるよう、政府は啓発活動に取り組むべきである。

[理由]

GX製品の生産には巨額投資・コストの上昇を伴う一方で、同製品が社会に普及するためには、かかるコストが製品価格に確実に転嫁される必要があるため。


【10】
[該当箇所]

第3章.第2節.2.(2)(g)GX市場創造(p.84, 4-8)

[意見]

「政府が自ら率先してグリーンスチールやグリーンケミカルなどのGX製品をはじめとした先端的な環境物品・サービスを調達・・・」と、GX製品の具体例を明記すべきである。

[理由]

GX市場創造のための初期需要創出にあたっては、GX製品が公共調達によって需要されることが極めて重要である。グリーンスチールやグリーンケミカルといった具体例を明示することで、事業者にとっての投資予見性の向上に繋がるため。


【11】
[該当箇所]

第3章.第2節.2.(2)(g)GX市場創造(p.84, 18-19)

[意見]

当該文章を、「GXリーグにおいて創設された『GX率先実行宣言』を活用し、宣言を行った企業への優遇措置などを通じて、企業による主体的な取組を進める」に改めるべきである。

[理由]

GX市場の創造には、製品・サービスの供給側へのアプローチだけでなく、GX需要の創出も不可欠である。「GX率先実行宣言」は、GX需要創出に積極的に関与する事業者を評価する枠組みであり、そもそも本宣言に多くの事業者が参画するためにはインセンティブを設けることが重要である。

なお、「GX率先実行宣言について」(2024年12月 GXリーグ事務局)3頁に、「宣言を行った企業への政府による優遇措置などを通じて 宣言の輪を拡大し、GX製品の市場形成に向けた機運を醸成していく」と明記されている。


以上

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