
中西氏
経団連は3月17日、東京・大手町の経団連会館で経済法規委員会企画部会(大内政太部会長)を開催した。経済産業省経済産業政策局の中西友昭産業組織課長から、「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会」における検討状況について、説明を聴くとともに意見交換をした。概要は次のとおり。
政府の「『日本再興戦略』改訂2014」でコーポレートガバナンス(CG)の強化が掲げられてから10年以上が経過し、日本企業におけるCGの取り組みは着実に進展してきた。これにより、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現している企業も増えつつある。
他方、昨今、企業を取り巻く経営環境は一層複雑化しており、経営陣は難しいかじ取りを迫られている。企業が積極的な成長投資を持続的に行っていくためには、CGの実効性を高め、「稼ぐ力」の強化を目指す必要がある。
そこで本研究会では、「稼ぐ力」の強化の観点から、CGの取り組みや会社法改正のあり方について議論している。議論の成果として、2025年1月には、会社法改正に関する報告書(注)を公表した。さらに、企業におけるCGの取り組みを支援するために、取締役会5原則とCGガイダンスの策定を検討している。
■ 取締役会5原則
「稼ぐ力」に資するCGを実現するうえで、取締役会が意識すべき内容を五つの原則として整理している。
主な内容として、取締役会が、自社の強みを踏まえた「価値創造ストーリー」を策定することや、経営陣による中長期目線での経営や適切なリスクテイクを後押しすることなどを示している。
また、取締役会はマイクロマネジメントをするのではなく、経営のプロセスや体制を確認すべきことを強調している。
■ コーポレートガバナンス・ガイダンス
本ガイダンスは、TOPIX500を構成する企業を主な対象として、各企業におけるCGの取り組みを支援するため、その前提となる考え方や具体的な取り組み方法を提示している。
具体的には、取締役会、指名委員会、報酬委員会、CEO・経営陣および取締役会事務局について、検討すべきポイントおよび取り組みの例を示している。例えば、取締役会に関しては、(1)自社の取締役会の役割を踏まえ、議長や個々の取締役の属性は適切か(2)取締役会の実効性評価の一環として、取締役個人の評価は必要ないか(3)投資家とのエンゲージメントに当たり、対話の相手や事項に応じ、対応する主体(社外取締役を含む)が明確となっているか――などを検討項目として盛り込んでいる。
◇◇◇
説明後の意見交換では、委員から「ガイダンスの記載内容は非常に細かく、形式主義につながるのではないか」との懸念が示された。
これに対して中西氏は、「企業が経営をアップデートし、投資家からの信頼獲得や成長投資等につなげていくことが重要である。しゃくし定規に、ガイダンスに記載されている取り組みを全てやってほしいという趣旨ではない。これらを参考に企業で議論しながら取り組みを進めてもらいたい」と述べた。
(注)「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会報告書(経産省ニュースリリース)
https://www.meti.go.jp/press/2024/01/20250117001/20250117001.html
【経済基盤本部】