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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年4月10日 No.3679 東京都のDXによる防災の取り組み -危機管理・社会基盤強化委員会首都直下地震等対策推進タスクフォース

原田氏

経団連は3月13日、東京・大手町の経団連会館で危機管理・社会基盤強化委員会首都直下地震等対策推進タスクフォース(光田毅座長)の第4回会合を開催した。東京都のデジタルトランスフォーメーション(DX)による防災の取り組みについて、東京都の原田智総 危機管理監から説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 防災DXの必要性

もはやDXなくして都の災害対応は困難である。背景には、(1)約1600万人の昼間人口を抱えるとともに、高密度立体化された近代的な区画と低層の木造住宅密集地が混在するという東京の特性(2)激甚化・頻発化に加え、同時対応の必要もあり得る災害の現状(3)首都直下地震が及ぼす甚大な被害想定の一方で労働力人口の減少に伴う人材不足――がある。

■ 都における防災DXの取り組み

都の災害対応における情報収集、情報管理、情報発信の核を担うのが東京都災害情報システム(DIS)である。2025年度には政府の新総合防災情報システム(SOBO-WEB)ともデータリンクを完了させる予定だが、市区町村・都・国で必要な情報の粒度が異なる。実際の情報の加工や視覚化は都独自で行う必要があるだろう。

この他、被災映像とGPS情報を重ね合わせた被災情報の地図表示、地震発生後に生じている被害の予測、SNS情報の分析、帰宅困難者の動態情報集計、画像を用いた住家被害度合いのAI判定等――のシステムを導入している。

システムを支えるネットワークも重要である。都内62市区町村と同時にテレビ会議を開催できる防災行政無線網は都の大きな財産である。衛星通信機器や、輻輳の影響を受けない閉塞LTEモバイル端末も利用している。

現実世界をサイバー空間で再現した「デジタルツイン」上で水害シミュレーションを行うシステムも開発している。実際に水害が起きた環境下で行える訓練は効果的で、災害対応力の向上につながる。

都民向けの情報発信では「東京都防災アプリ」を公開している。外国人向けに多言語化されているだけでなく、子ども向け、シニア向けのモードも用意している。

今後、次世代DISの構築を進める。データ連携や情報表示、操作が容易にできるように改善していく予定である。

また、能登半島地震で課題となった、発災直後の安否確認から復興時の生活再建支援まで一貫して、被災者情報を管理できるシステムを作成できないか、検討を進めていく。

■ 今後の課題

システム利用には災害時でも確実に使えるネットワークが必須である。そのため、さらなる冗長化を図る必要がある。

また、被災者支援に不可欠な個人情報のきめ細かな取り扱いについて、制度上の課題を整理し、国などと調整していく。市区町村が扱う住基データの活用や、インバウンド旅行者情報を把握する方法などが論点になるだろう。

さらに、サイバーセキュリティ対策も欠かせないなか、専門人材の確保が悩みである。

◇◇◇

説明後、参加企業が、事業継続計画(BCP)の取り組み状況と課題について事例を紹介した。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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