経団連と年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2月20日、東京・大手町の経団連会館で「経団連・GPIF第2回アセットオーナーラウンドテーブル」を開催した。GPIFをはじめとしたアセットオーナー、資金運用を担うアセットマネージャー(運用会社)、経団連金融・資本市場委員会(髙島誠委員長、日比野隆司委員長、佐藤雅之委員長)の委員(発行体企業)の3者合わせて約50人が参加した。

右から髙島副会長、宮園氏、日比野委員長
■ 開会、グループでの討議

グループ討議
髙島副会長・同委員長による開会、GPIFの宮園雅敬理事長によるあいさつの後、四つのグループに分かれての討議とその発表、全体での意見交換を行った。
グループでの討議では、(1)企業と投資家との対話(2)株主総会での議決権行使――について、課題や課題の解決に向けた方策を巡り活発な議論が交わされた。3者からは次のようなコメントがあった。
(1)企業と投資家との対話
【企業側】
○IR(企業と投資家との対話)の場で、投資家に対して企業価値の向上に向けた取り組みを説明し、投資家から経営へのアドバイスをもらうなど、双方向の対話が機能している。
○企業は中長期的な成長を目指しているが、運用会社のなかには短期的な成果を重視するところもある。両者の間に生じる時間軸の違いが対話の課題である。
【運用会社側】
短期的な資本収益率(ROE)が上がらないから投資しないのではなく、企業側が将来の企業価値向上に向けた計画やプロセスを示すことが重要。投資家はこの点を見ている。
(2)運用会社の議決権行使
【企業側】
企業価値向上に向けた未来志向の取り組みではなく、過去の実績に基づいた判断が多い。対話をしても最終的には形式的な基準に基づいて判断がなされる傾向がある。
【運用会社側】
議決権の行使判断をするうえで何らかの基準は必要であり、最低限これをクリアしてほしいという期待がある。一方、投資家は、企業価値向上の観点から、この基準の設定に関する考え方や背景を十分に説明することが重要である。
【アセットオーナー】
運用会社に対して議決権行使の参考となるガイドラインを提示・公表しているが、画一的に判断するのではなく、対話をした場合にはその対話の結果も踏まえ、個別の議決権行使判断を求めている。企業側と運用会社側のギャップを埋めていくことが重要である。
■ 閉会
閉会に際して日比野委員長は、「3者の対話は良い試みだった。議決権行使へ関心は高まっており、IRとSR(議決権行使に向けた株主との対話)を統合し、通年ベースで議決権行使について対話することが理想である」と指摘した。
宮園氏は、「非常に有意義な取り組みであった。投資家と企業は企業価値向上という点で同じ目的に向かっており、IRとSRを融合した形で機能が発揮されることが重要である」とコメントした。
最後に髙島副会長・同委員長が、「企業と投資家の相互理解によって企業価値が高まり、株価が上がり、日本全体が繁栄するというウィンウィンウィンの結果を目指すうえで、今回の取り組みは良い機会になった」と、継続的な対話の重要性を強調して会合を締めくくった。
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経団連は、金融・資本市場の発展に向け、今後も、企業と投資家との建設的対話の深化に向けて取り組んでいく。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】