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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年3月27日 No.3677 欧州委員会の優先課題 -パケ駐日EU大使から聴く/ヨーロッパ地域委員会

パケ大使

経団連のヨーロッパ地域委員会(東原敏昭委員長、髙島誠委員長)は2月25日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催した。ジャン・エリック・パケ駐日欧州連合(EU)代表部大使から、新しい欧州委員会の優先課題について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 域内の優先課題

2024年12月に発足した新しい欧州委員会は、競争力強化を優先課題としている。25年1月に公表した競争力コンパスでは、企業の報告義務を削減し、許認可を迅速化する方針を示している。

競争力強化には投資が必要である。日本と同様、欧州にも多くの貯蓄があるが、米国に3000億ユーロの投資が流れている。域内の資本市場を統合すべく、具体的な提案を行う予定である。

■ 気候変動対策と産業政策の一体化

30年の温室効果ガス55%削減目標の達成に向け、順調に取り組みを進めている。化石燃料由来の電力は全体の25%まで削減された。40年の目標は検討中だが、90%減とすることで50年カーボンニュートラル(CN)に向けた取り組みを加速させたい。CCS(二酸化炭素回収・貯留)や、回収した二酸化炭素の活用にも取り組むこととしており、日欧で協力できると思う。

エネルギー集約産業は圧力にさらされているが、それは気候変動に起因するものだけでなく、国際的に不公平な競争、投資・イノベーションの停滞等によるものである。「クリーン産業ディール」のもと、エネルギー集約産業の脱炭素化を進めるため、鉄鋼、化学、自動車等の業界ごとの活動計画を策定する。また再生可能エネルギーの導入量を増やし、送電網の近代化といったエネルギーインフラを整備するほか、サービスのデジタル化も進めつつ、適正な価格で電力を提供したい。日本とは、AIを使ったグリッド管理や、グリッドのサイバーセキュリティについて協力したい。

■ デジタル規制と日EUデジタル協力

日EU間ではデジタル分野の協力も進んでいる。22年に日EUデジタルパートナーシップを立ち上げ、半導体、AI、量子、6G、自動運転、サイバーセキュリティ等について協力が進められている。また24年、日EU経済連携協定(EPA)にデータの自由な流通に関する規定が追加された。日EUでは個人データ保護水準に関する相互十分性を認定している。

EUは自動車、ヘルス、科学等で分野ごとのデータの連結性も高めている。個人情報保護については、日本と同様に厳しい規制があるものの、AIの開発を促進するため、データを活用できるようにしたい。エネルギー、気候変動、ヘルス等で社会に有用なAIを生み出すべく、日本と緊密に連携したい。

■ 外交・安全保障・経済安全保障

EUは経済安全保障について、プロモーション、プロテクション、パートナーシップ――を軸としている。プロモーションとしては、競争力強化やサプライチェーンの強靭化、重要原材料の確保等に取り組んでいる。サプライチェーンの強靭化は、パートナーシップとも関わっており、日EU・EPAのもとでも協力の方策について検討することが重要である。

また、24年に締結した日EU安全保障・防衛パートナーシップでは、サイバー攻撃、外国による情報操作・干渉、宇宙・海洋等について言及している。防衛産業における協力についても議論が始まっている。日EU共に、当面は需要が供給を上回るので、国際協調も重要となる。

ウクライナについては、日本の支援に感謝している。復興に向け、欧州企業も日本企業との協力に関心を持っている。ウクライナは、EUへの加盟に向け、EU基準に沿って市場を再構築しようとしており、日本企業にとって大きなビジネスチャンスとなる。

【国際経済本部】

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