1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2025年3月20日 No.3676
  5. 開発資金とサステナブルファイナンスを巡る動向

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年3月20日 No.3676 開発資金とサステナブルファイナンスを巡る動向 -企業行動・SDGs委員会企業行動憲章タスクフォース

大野氏

経団連は2月19日、東京・大手町の経団連会館で企業行動・SDGs委員会企業行動憲章タスクフォース(関正雄座長)を開催した。政策研究大学院大学の大野泉名誉教授から、ブレンデッドファイナンスを含むサステナブルファイナンスへの期待等について説明を聴き、意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ SDGs資金ギャップと世界・日本の開発協力

新型コロナウイルス感染症やウクライナ情勢等の複合的な危機により、世界のSDGsの進捗は大きく妨げられている。SDGs達成のための資金ギャップは年間4兆ドルに上り、特に、エネルギー・気候変動、水・衛生分野で資金が不足している。

世界の政府開発援助(ODA)実績は2233億1000万ドル(2023年、贈与相当額)で、このうち米国が第1位(646億9000万ドル)、日本はドイツに次ぐ第3位(196億ドル)である。先進国から途上国への資金流入について、ウクライナ支援もありODAを中心とする公的資金は増加傾向にあるが、民間資金の伸びが大きく、公的資金と民間資金との組み合わせが重要になっている。さらに最近、トランプ政権が米国の対外援助凍結・見直しを表明し、世界のODAに与える影響が懸念されている。

日本は「開発協力大綱」(23年閣議決定)において、途上国・新興国との対等なパートナーシップに基づく「共創」とともに、社会的課題解決のために民間企業との協働、開発効果を有する民間資金の動員を強く打ち出している。

■ ブレンデッドファイナンス

近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資を含む世界のサステナブルファイナンスは拡大し、日本でも急速に関心が高まっているが、新興国や途上国向けのものは限定的である。そこで、公的資金がリスクを取ることにより、社会的課題解決のための民間資金の動員につなげる、ブレンデッドファイナンスへの期待が高まっている。

日本のODAの実施機関である国際協力機構(JICA)は、民間主体の事業に対する海外投融資を実施している。しかしJICA法は、「達成見込みがある開発事業の実施」を前提としているため、JICAは欧米のODA・開発金融機関と異なり、保証等のリスクテイクができない。

そのようななか、現行のODAのあり方を見直すために、24年7月、外務省の「開発のための新しい資金動員に関する有識者会議」が「サステナブルな未来への貢献と成長の好循環の創造に向けて」と題する提言をまとめた。同提言は、(1)民間企業や投資家の経済合理性に基づく投資が途上国の開発につながる「エコシステム」の構築(2)保証等のJICAのリスクテイク機能の拡充を通じたブレンデッドファイナンスの活用(3)政府や実施機関のガバナンス強化と官民連携による潜在的な投資先の発掘――を骨子とする。政府には、スピード感を持った制度の抜本的見直しと、官民での継続的な協働の場作りを率先してもらいたい。

■ 第4回開発資金国際会議

25年6~7月に国連の第4回開発資金国際会議がスペインで開催される。SDGs達成への強い危機感に加え、米トランプ政権の反ESG・反国際協調の姿勢への懸念が高まるなか、膨大な資金ギャップに対する取り組みについて議論する予定である。

同会議の成果文書のゼロドラフトでは、大規模な投資プッシュやインパクト強化を含むグローバルなファイナンス枠組みの更新のほか、国際金融開発機関への要請が記載されている。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

「2025年3月20日 No.3676」一覧はこちら