
蓮井氏(右)、田邉氏
企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進していくうえでは、自らが保有するデータを最大限活用し、持続的な企業価値の創出につなげていく視点が極めて重要である。
こうした考え方に基づき、デジタル庁では、企業による「データガバナンス(保有するデータを安全かつ効果的に活用するための全社的な取り組み)」の必要性や、そのあり方、実践に当たっての要点・留意点等をまとめた企業経営者向けガイドラインを策定すべく、検討を進めている。
そこで経団連は2月17日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、デジタル庁の蓮井智哉審議官および田邉栄一企画官から、同ガイドライン案について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 経営者に求められる視点
デジタル庁では、経済発展と社会的課題の解決を両立するSociety 5.0の実現に向けて企業経営者がトップダウンで取り組む際の手引として、データガバナンス・ガイドライン(ガイドライン)を位置付けている。
データガバナンスは、経営者の責任として、強いリーダーシップのもとで実施すべき施策である。その実行に当たっては、「経営ビジョンとDX戦略との連動」「経営者による説明責任」「データを最大限利活用できる体制の構築」「企業文化への定着と人材の育成」の視点を意識することが肝要である。
■ データガバナンス実装における四つの柱
ガイドラインでは、ステークホルダーとの相互信頼のもと、データの共有・連携・利活用を通じて企業価値を向上させる観点から、次の四つの柱を設け、各柱にそれぞれ「基本となる考え方」「経営者が認識しておくべきこと」「望ましい方向性」を記載している。
- 越境移転の現実に対応した業務プロセス=法令等のルールが不断に変化する国・地域とのデータの相互運用を可能とすることを企図
- データセキュリティ=データのライフサイクルを踏まえ、自社が直接には管理できない共有・連携先に対するルール・技術・プロセスの組み合わせ
- データマチュリティ=持続的かつ組織的に、データを柔軟に最大限活用する企業の総合的な能力
- AI等の先端技術の活用に関する行動指針
なお、ガイドラインでは、国内外の環境変化に伴う事象に対し、経営者・データ責任者(CDO=Chief Data Officer)や専任部門等が取るべき行動も整理している。
データ利活用を進めることにより、「企業価値の向上」、さらには「社会全体のサステナビリティの向上」につながることが期待される。ガイドライン案に関するパブリックコメントに当たっては、ユーザーとなる企業の皆さまから、ぜひ積極的に意見を出してもらいたい。
【産業技術本部】