経団連は2月19~25日、訪米ミッションを派遣した。これに先立ち同月4日、アメリカ委員会(澤田純委員長、早川茂委員長、赤坂祐二委員長)を東京・大手町の経団連会館で開催した。経済産業省通商政策局の荒井勝喜局長、外務省北米局の熊谷直樹審議官から、米国の政治・経済等に関する最新情勢について、それぞれ説明を聴いた。荒井、熊谷の両氏は、トランプ政権との関係構築に向けて、官民双方での重層的な意思疎通の重要性を強調した。特に経済界に対し、投資や雇用創出を通じた米国経済への貢献をアピールしていくことへの期待を示した。概要は次のとおり。
■ 荒井氏

ドナルド・トランプ大統領は、第2次政権における通商政策として、米国ファーストの方針のもと、関係閣僚に対し、不公正・不均衡な貿易への対処として世界規模の補完関税の導入や既存の貿易協定の見直し等を検討し、4月1日までに報告書をまとめるよう指示した。一方で、国際緊急経済権限法等に基づき、メキシコ・カナダ・中国向けの関税措置が検討され、中国に対しては実際に10%の追加関税が賦課されている。これらの関税措置の実施は、第1次政権時と比べて早い。メキシコ・カナダ・中国以外で対米貿易赤字額を多い順に並べると、EUや日本、韓国等が続く。EUに対する関税賦課はすでにトランプ大統領が発言している。
米国からの関税措置に対して、中国から即日対抗措置が発表されており、日本企業に与える影響を注視したい。また、メキシコ・カナダ・中国で米国の輸入額の40%弱を占め、EUも含めると輸入額の60%に達する。インフレなど米国経済への影響にも注視が必要である。
日本は、対米直接投資残高で5年連続首位を維持している。現地での雇用創出や地域貢献を通じて、日本企業の存在は高く評価されている。地方から声を上げていくことが重要である。19日からの訪米ミッションにも期待している。先端技術やエネルギー分野など、日米でウィンウィンの関係を築ける分野は多く、協力を進めていくことが重要である。
■ 熊谷氏

トランプ大統領就任式への岩屋毅外務大臣の招待や外相会談の実現など、米国政府においては、新政権発足直後から日米関係を重視する姿勢がうかがわれる。両国間においては、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の構想を共通ビジョンとして掲げ、安全保障面での協力を一層強化していく。トランプ大統領が初めて明確にFOIPへのコミットメントを述べたのは、2017年のAPEC首脳会議での演説である。第2次政権でもこれを日米共通のビジョンに据えていきたい。
現在、厳しい安全保障環境のなか、北朝鮮とロシアの協力、中国の一方的な現状変更の試みが見られる。これに対し、防衛装備品や技術面での協力を日米で進めており、ミサイルの共同生産なども視野に入れている。
経済安全保障の面では、サプライチェーンの強化を米国と歩調を合わせて進めていく方針である。マルコ・ルビオ国務長官は、重要鉱物資源のサプライチェーン強靭化に関する法案を議会に提出するなど、この分野に強い熱意を持っている。また、QUAD(日米豪印)外相会合が新政権の最初の多国間会合として開催されたことは、米国が同盟国・同志国と積極的に連携していく姿勢を示すものといえる。今後の首脳会談でも、台湾海峡の平和と安定の重要性や北朝鮮問題への対応など、地域の安全保障課題について確認していく。
【国際経済本部】