経団連は2月4日、東京・大手町の経団連会館で、消費者関連専門家会議(ACAP)、消費者庁との共催により、「2025消費者志向経営トップセミナー」を開催した。消費者政策を所掌する鳩山二郎内閣府副大臣の冒頭あいさつに続き、社会と共生するグローバルフードカンパニーを目指し、讃岐うどん専門店「丸亀製麺」などを展開するトリドールホールディングスの粟田貴也社長兼CEOが基調講演した。その後、「消費者と事業者との双方向コミュニケーション」をテーマに、各界有識者によるパネルディスカッションを行った。概要は次のとおり。
■ 開会あいさつ(鳩山副大臣)

消費者志向経営とは、消費者との協働による商品・サービスの改善を通じて、消費者の行動変容を促し、社会価値の向上を目指す経営である。消費者との協働に当たっては、消費者と事業者の双方向コミュニケーションが行われることが重要である。また、例えば、環境に配慮したグリーン志向の消費行動の促進のように、消費者の意識や習慣を変えるため、消費者へ働きかけることも重要である。日頃から、消費者志向経営を進めている企業においては、引き続きさまざまな問題意識や社会課題を共有し、取り組みの一層の高度化や拡大を推進してもらいたい。消費者志向経営の輪がより一層広がり、一人ひとりの消費者を幸せにし、社会をより良くするとともに、次世代につながっていくことを期待している。
■ 基調講演「食の感動で、この星を満たせ。」(粟田氏)

「食の感動で、この星を満たせ。」は、3年前に掲げた当社のスローガンである。感動を起点としながら、多くのお客さまにご来店いただき、地球全体に店舗を広げていきたいという、壮大な思いを基にしている。
手づくり・できたて・店内製麺といったお客さま目線の利点と、チェーン展開・大量生産といった企業目線の利点を、「トレードオフ(二律背反)」ではなく、「トレードオン(二律両立)」(同訳はトリドール社の造語)の関係と捉えることを徹底してきた。結果として、属人性の高い手づくりやできたてという特徴は他社にとって大きな参入障壁となる一方、お客さまにとっては、うどんという「もの」ではなく、製麺所でできたてを食べることが「体験価値(感動)」となった。
企業規模が大きくなるにつれ、地域や社会との連携の重要性が高まり、お客さまに感動体験を提供する社員のエンゲージメント向上や、D&I(Diversity & Inclusion)推進に関するさまざまな取り組みを実施している。お客さまや社員とのコミュニケーションを重視した経営で、企業価値を高めている。
■ パネルディスカッション
事業者と消費者とのコミュニケーションについて、新たに政策課題となったカスタマーハラスメント(カスハラ)への対応も含めて、議論が行われた。

パネルディスカッション
全国消費生活相談員協会の増田悦子理事長は、事業者からの説明をうまく理解できずに困っている消費者もおり、事業者は、まずは消費者に理解されやすい説明かという視点を持って対応してもらいたいと述べた。
石井食品の石井智康社長執行役員は、お客さまの声は改善につながるので、カスハラの境界線をどこに引くか明確にすること、そして従業員が一人で抱え込まないように、相談しやすい職場環境を整備することが重要であると強調した。
消費者庁の藤本武士政策立案総括審議官は、消費者と事業者は対峙関係ではなく、持続可能な社会を築いていくパートナーであるという意識を共有することが必要であると指摘した。
ACAPの坂田祥治理事長は、企業は、消費者対応における初動や、消費者のみならず従業員とのコミュニケーションの重要性を理解し、組織の対応力を向上させる取り組みをさらに推進していく必要があると提言した。
議論を受けて、コーディネーターを務めた法政大学大学院の柿野成美准教授は、デジタル時代において、改めて人と人とのコミュニケーションの重要性が確認されたと指摘。そのうえで、うまく自分の声を伝えることができない消費者の存在に留意しながら、消費者と事業者のより良いコミュニケーションのあり方について、引き続き検討していく必要があると締めくくった。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】