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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年3月6日 No.3764 防災庁設置に向けた官民連携の取り組み

高橋氏

経団連は1月31日、東京・大手町の経団連会館で、「防災庁」の設置に向けた政府の取り組みや、民間との連携に関する説明会を開催した。内閣府政策統括官(防災担当)・防災庁設置準備室次長の高橋謙司氏から「防災庁設置に向けた官民連携の取り組み」と題して説明を聴くとともに意見交換した。企業から約170人が参加した。概要は次のとおり。

■ 「令和6年能登半島地震」を踏まえた災害対応のあり方

能登半島地震で大きな被害を受けた石川県では、死者508人のうち災害関連死が280人と半数以上を占めている。災害関連死の4割は90歳代、8割以上は80歳以上の高齢者である。今後、わが国では高齢化がさらに進むことを踏まえ、初動対応や被災者支援において、高齢者への福祉的な視点からの取り組みが不可欠である。

災害関連死の防止に向けては、「スフィア基準」(注1)の基本理念を参考に、空調設備やパーティション、段ボールベッドの設置等を避難所運営ガイドラインに反映させ、避難所の生活環境の改善を進めていく。また、避難生活を支援するボランティア人材の育成やキッチンカー、トイレトレーラーの登録等、NPOや民間企業との連携強化も進める。さらに、道路等のインフラの寸断による孤立集落の発生や、ライフラインの復旧の遅れが生じたことから、耐震化の一層の推進やインフラの強靭化等の事前防災を推進することが重要である。

■ 想定される大規模災害と政府の施策

今後30年以内に、「南海トラフ地震」は80%程度、「首都直下地震」は70%程度で発生が予想される。巨大地震は、起こるか否かではなく「いつ起こるか」の問題であり、大規模災害への備えは待ったなしである。

政府では、南海トラフ地震や首都直下地震の被害想定の見直し、最新の知見を踏まえた基本計画の改定を進める。また、激甚化・頻発化する大規模災害に備え、河川の整備や企業の事業継続力強化に向けた支援、防災・減災に資するデジタル技術の利活用促進に向けた官民連携プラットフォームの設置等、国土強靭化への取り組みを進めている。

■ 防災庁設置による抜本的な体制強化

次なる大規模災害に備えて、政府は災害対応体制の強化に向け、2024年11月に防災庁設置準備室を立ち上げた。26年度中の防災庁の設置を見据え、内閣府防災担当の25年度当初予算を倍増し、災害対応力の強化、災害対応の司令塔機能の強化を進める予定である。

災害対応力の強化として、(1)プッシュ型支援の迅速・確実な実施などの避難所生活環境の抜本的改善(2)被災者や避難生活支援に向けた官民連携や人材育成の推進(3)新総合防災情報システム(SOBO-WEB)の社会実装等の防災デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速――などを進める。司令塔機能の強化に向けては、関係省庁による事前防災対策を推進する仕組み(事前防災対策総合推進費)を創設する。

また、防災庁設置までの間、災害対応の司令塔機能を担うこととなる内閣府防災担当では、人員面を抜本的に強化するため、(1)災害対応を統括する「防災監」(2)地域防災強化担当――を新設する予定である。人員体制の整備も、官民人事交流により、現在の110人から220人に倍増するよう進めており、企業からぜひ応募してもらいたい(注2)

■ 意見交換

説明会後の意見交換では、参加者から、「防災庁には、防災・減災対策における司令塔として、強力なリーダーシップを発揮することを期待する」「有事における政府と自治体、また各省庁との役割分担において、調整機能を発揮してほしい」との意見があった。

(注1)災害等の被災者に対する支援活動における国際的な基準

(注2)詳細は内閣府防災担当まで(連絡先=bousai.jinji@cao.go.jp)

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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