1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2025年3月6日 No.3764
  5. OECD・BIACの活動に関する懇談会を開催

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年3月6日 No.3764 OECD・BIACの活動に関する懇談会を開催 -OECD諮問委員会

経団連のOECD諮問委員会(稲垣精二委員長)はOECDの公式諮問機関であるBIAC(Business at OECD、経済産業諮問委員会)への参画を通じて、OECDの政策論議に関与している。同委員会は1月31日、東京・大手町の経団連会館で対面とオンラインのハイブリッド形式で会合を開催した。BIACのハンニ・ローゼンバウム事務局長、ニコール・プリマー副事務局長らから、OECD・BIACの最新動向について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

ローゼンバウム氏(右から2人目)、プリマー氏(左から2人目)

■ BIACの活動

BIACは、デジタルや税、投資、責任ある企業行動などのさまざまな政策分野において、グローバルなビジネス環境を形成するOECDの基準作りに貢献している。2025年の活動の中心となる優先分野は、競争力、経済のレジリエンス、開かれた市場の促進、エネルギー安全保障とインフラ投資に連動したグリーントランジション、デジタル政策とAIなどである。

■ 米国新政権がもたらすOECD・BIACの活動への影響

トランプ米大統領はすでにパリ協定と世界保健機関(WHO)からの脱退や、対外援助プログラムの休止、関税を武器とする「米国第一主義」の貿易政策の実施、グローバルミニマム課税を適用しないことなどを表明している。

OECDは引き続き米国および関係する全ての国々と、国際税制における協力を促進することを再確認している。BIACの税制委員会でも、国際税制に関する多国間協力のため、対話を継続することが重要と強調している。

OECDは、規制改革、インフラ、重要鉱物、半導体、中国の補助金の現状分析など、米国の新政権にとって興味深い活動を数多く実施している。このため、米国がOECDに積極的に関与しないというのはあり得ないと考えている。

■ 各政策分野の取り組み

23年にOECDが定めた貿易政策の中核的な優先事項は、(1)世界貿易機関(WTO)改革の支援を通じた多国間主義の強化(2)サプライチェーンのレジリエンスの強化(3)OECD多国籍企業行動指針や、国境炭素調整などを通じた貿易の社会的・環境的持続可能性の強化――である。BIACの貿易委員会でも同年、貿易政策に関する優先課題を策定したが、25年に更新する予定である。

環境・エネルギー政策では、一部のOECD加盟国の支持のもと、OECDは石炭からの移行のための資金調達に関する金融機関向けのガイドライン(Guidance for Credible Coal Policies by Financial Institutions)の策定を進めている。しかし、実質的に石炭利用を一切認めずに完全移行を目指したものとなっていることや、代替エネルギー源とインフラの準備状況、潜在的な労働移動が考慮されていないことなどが問題となっている。

また、デジタル経済政策では、デジタル分野の規制の分断が与える影響や、信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)、セキュリティ、AIが優先事項となっている。セキュアな環境でデータが流通することで、企業がソリューションを提供できるようにすべきであり、国際的な枠組みやデジタル政策の調和によって、規制の整合性とデータの相互運用性を持たせることが必要である。また、途上国も視野に入れつつ、19年に策定されたOECDのAI原則を実施するためのツール作りを進める必要がある。

14年にOECDは、東南アジアにおける地域連携や自由貿易、持続可能な成長などを強化するために、日本のリーダーシップのもと、より効果的なガバナンスフレームワークの確立を目指す東南アジア地域プログラム(SEARP)を立ち上げた。将来的な加盟候補国を見つけ出すことをプログラムの目標の一つにしており、24年にはタイとインドネシアのOECDへの加盟審査プロセスが進み始めた。BIACは加盟国の企業に両国のビジネス上の障壁についてアンケートを行い、その結果を加盟審査に反映させるべく、OECDに共有する予定である。

【国際経済本部】

「2025年3月6日 No.3764」一覧はこちら