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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年2月27日 No.3673 シンポジウム「第二次トランプ政権の環境エネルギー政策と労働者層支持の動向」を開催 -21世紀政策研究所

久保研究主幹

前嶋研究副主幹

杉野研究委員

松井研究委員

21世紀政策研究所(十倉雅和会長)の米国研究プロジェクト(研究主幹=久保文明防衛大学校長)は1月29日、シンポジウム「第二次トランプ政権の環境エネルギー政策と労働者層支持の動向」をオンラインで開催した。前半は松井孝太研究委員(杏林大学総合政策学部准教授)と杉野綾子研究委員(武蔵野大学法学部准教授)が講演。後半は久保研究主幹がモデレーターとなり、前嶋和弘研究副主幹(上智大学総合グローバル学部教授)、杉野研究委員、松井研究委員と4人でディスカッションを行った。概要は次のとおり。

■ 講演「トランプ政権と労働者層をめぐる動向」(松井研究委員)

トランプ米大統領は就任演説で、自動車労働者への感謝の言葉を述べ、労働者を守るために貿易政策を見直すと表明した。選挙結果を振り返ると、共和党支持者と民主党支持者との間で学歴や収入の傾向に歴史的な逆転が起きている可能性がある。労働者層支持の変化要因として、(1)人工妊娠中絶など社会文化争点への傾倒に対する違和感(2)労働者層を疎外する自由貿易(3)労働者層を取り巻くコミュニティの変化――の3点が考えられる。

新政権は労働組合に厳しく対応していくと思われ、バイデン政権下で導入された労働組合のルールは撤回される可能性が高い。ただし、労働長官には新労組姿勢の人物が指名され、労働組合からは歓迎ムードもある。

共和党では、バンス副大統領をはじめとした労働者の支持を引き寄せることを主張する人が増えている。今後米国の政党のあり方を考えるうえで注目すべき点である。

■ 講演「トランプ政権の環境エネルギー政策」(杉野研究委員)

エネルギー関連の大統領令は4件署名された。一つ目はパリ協定からの離脱である。第1次政権では連邦の決定とは裏腹に自治体や企業が脱炭素を進めたが、今回は例えば業界の脱炭素アライアンスから抜ける金融機関が出てくるなど、企業も盲目的な脱炭素ではなくなっている。

二つ目はアラスカの天然資源開発である。バイデン政権は探査活動に対して環境に配慮するよう待ったをかけたが、これを撤回する。ただ、4年後に政権が交代したらまた事業を止められるリスクがある状況で、開発がどれだけ進むか疑問である。

三つ目はエネルギーについての国家非常事態宣言である。注目すべきは、水質浄化法や絶滅危惧種法を回避して、インフラ事業を進められるという点である。

四つ目が最も重要で、米国内のエネルギー資源活用である。これまでのように行政が法律を勝手に解釈することはせず、規制が関連法に基づくことを保証している。そして、温室効果ガスの危険性を見直すとしているが、これは全ての気候変動対策の根拠に影響を及ぼす可能性がある。

■ ディスカッション

久保研究主幹は、民主党と共和党の支持は拮抗し続けているものの、その支持基盤が50年をかけて大きく入れ替わっていると指摘した。そして、共和党は労働者からの支持をより強める政策を採用するのかと問いかけた。

前嶋研究副主幹からは、共和党本来の減税と規制緩和の政策の一方で、関税による消費者への負担が表面化すると、労働者の不満が高まるのではないかという質問があった。

これらに対して松井研究委員は、有権者は政策を見ているというよりは、生活実感に反応している可能性があるとの見解を示した。そのうえで新政権がインフレを継続させてしまうと反動が起こるとした。

また前嶋研究副主幹から、米国が新たに開発する資源が日本へ来るのはいつ頃かという質問があった。これに対して杉野研究委員は、これから許可する開発に係る建設は2030年ごろになるが、人と資材が集まっていないとの見方を示した。

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