
澁谷氏
経団連は1月17日、東京・大手町の経団連会館で労働法規委員会労働法企画部会労働時間制度等検討ワーキング・グループ(田中輝器座長)を開催した。厚生労働省労働基準局の澁谷秀行労働条件政策課長から、「労働基準関係法制研究会」の報告書について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
厚労省は、今後の労働基準関係法制について包括的かつ中長期的な検討を行うとともに、働き方改革関連法の施行5年後見直しの附則に基づく労働基準法等の見直しに向けた具体的な検討を行うため、2024年1月に「労働基準関係法制研究会」を設置した。学識者の委員が今後の労働基準法制の方向性について幅広く検討し、25年1月8日に報告書を公表した。同報告書は、(1)「労働者」や「事業」、労使コミュニケーションのあり方など「労基法に共通する総論的課題」(2)最長労働時間規制や労働からの解放に関する規制など「労働時間法制の具体的課題」――についての考え方が整理されている。
■ 労基法上の「労働者」と「事業」の考え方
労基法第9条の「労働者」については、1985年に労働基準法研究会報告で判断基準が示されて以降、その見直しはされていない。しかし近年、産業構造の変化により、プラットフォームワーカーなど労基法の「労働者」に当てはまるか否かの判断が困難な働き方が増えてきている。そのため、今後、厚労省において別途専門的な研究の場を立ち上げ、労働者の判断基準について、諸外国の制度も参考にしつつ検討することを求めている。
「事業」については、本社に労務管理機能が集約されるなど企業の労務管理の変化等を踏まえ、企業単位や複数事業所単位で同一の労働条件が定められているような場合で、適切な労使コミュニケーションが行われているときは、労使の合意により、手続きを企業単位や複数事業所単位で行うことも選択肢になることを明確にすることが考えられるとしている。
■ 労使コミュニケーション
同研究会では、過半数労働組合がない企業における労使コミュニケーション、特に過半数代表者のあり方について議論がなされた。具体的には、過半数代表者選出手続きの見直しや、使用者による過半数代表者への情報提供や便宜供与のあり方、過半数代表者であることを理由とした解雇・異動等の不利益取り扱いの禁止を明確化することが必要と指摘している。
■ 労働時間制度
休日制度については、13日を超える連続勤務を禁止する規定を労基法に設けることを提起している。
勤務間インターバルについては、抜本的な導入促進と義務化を視野に入れつつ、多くの企業が導入しやすい形で制度を開始するなど、段階的に実効性を高めていく形が望ましいとしている。また、インターバル時間を確保できなかった場合の代替措置などについても、さまざまな手段を考慮した検討が必要と指摘している。
副業・兼業の割増賃金算定における労働時間通算規定については、運用が複雑であるために企業が雇用型の副業・兼業を認めにくいことや、諸外国では通算がされていないことなどを踏まえ、割増賃金算定の通算を要しないよう制度改正が必要としている。
今後は、厚労省労働政策審議会条件分科会において、同報告書を踏まえつつ、労使双方の意見を聞きながら見直しの議論を進めていく。労使の合意が得られた事項については、2026年の通常国会に改正法案の提出を目指す。
【労働法制本部】