
谷貝氏
経団連が2024年2月に公表した「グローバルな市場創出に向けた国際標準戦略のあり方に関する提言」では、各省庁の施策を総合的に調整し、わが国の国際標準戦略を俯瞰的に策定、推進する常設機関として「国際標準戦略本部」を設置すべきとした。
政府は同年5月、知的財産戦略本部構想委員会のもとに新たに「国際標準戦略部会」を設置し、同部会において、25年6月に知的財産戦略本部会合にて決定予定の「国際標準に係る国家戦略」(仮称、国家戦略)に関する議論を進めている。国際標準戦略に関する検討を進めていくうえで、同戦略の検討状況を把握することが肝要である。
そこで経団連は1月22日、知的財産・国際標準戦略委員会国際標準戦略部会(澤井克行部会長)を東京・大手町の経団連会館で開催した。内閣府知的財産戦略推進事務局の谷貝雄三企画官から、国際標準の戦略的活用に向けた国家戦略の検討状況について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 国家戦略策定の背景
06年に「国際標準総合戦略」が策定され、各種の取り組みがなされてきたが、経営者の標準化に対する意識啓発といった課題が現在においても残存している。
他方、イノベーションや市場創出における国際的なルール形成の重要度が増している。ここ数年、欧米中において国家標準戦略が公表されるなど、各国とも国際標準に関する取り組みを強化している。
そこでわが国としても、官民一体となって国際標準に関する取り組みを一層強化すべく、国家戦略の策定に向けて検討を行っている。
■ 国家戦略の検討状況
国家戦略の策定に向けて、論点を次の八つに整理して議論している。(1)国際標準活動の意義・目的とそのナラティブ(物語)、それらを踏まえた将来像とその実現に向けた課題・方策(2)企業や大学等における経営・研究と国際標準との一体化、行動変容(3)国際標準エコシステムの構築・強化(4)標準・認証等に関する官民ガバナンス改革(5)産金学官連携の強化、司令塔機能の強化、政府の支援策のあり方(6)国際連携・パートナーシップの強化(7)重要領域・戦略領域の選定基準とその選定・基本的な方針の策定(8)実効的なモニタリング・フォローアップの枠組みの検討。
特に、論点(7)と(8)に関しては、それぞれ検討を深めるべく、ワーキンググループ(WG)を立ち上げた。
重要領域・戦略領域WGでは、わが国が注力すべき重要領域・戦略領域の選定基準や具体的な領域の選定、当該領域における国際標準活動の基本方針等について議論している。領域の選定に当たっては、わが国にとっての重要度に加え、標準化が、市場創出や競争戦略、社会実装における主要な課題解決手段になるかという観点を重視している。
モニタリング・フォローアップWGでは、国家標準戦略の前提条件となる標準化動向のモニタリングと国家標準戦略の実行のフォローアップのメカニズムを設計すべく、議論を進めている。
今後、24年度内をめどに素案を取りまとめ、パブリックコメントに付す予定である。
【産業技術本部】