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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年2月20日 No.3672 韓国の政治情勢と日韓関係の展望 -日本・韓国経済委員会

深川氏

経団連は1月31日、東京・大手町の経団連会館で日本・韓国経済委員会(佐藤康博委員長、岩田圭一委員長)を開催した。早稲田大学政治経済学術院の深川由起子教授(21世紀政策研究所研究主幹)から、韓国の政治情勢と日韓関係の展望について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 韓国の政治情勢の現状と背景

韓国では尹錫悦大統領による非常戒厳宣言に端を発する政治的混乱が継続している。現在、尹大統領に対して、内乱首謀容疑に対する捜査と憲法裁判所による弾劾裁判が行われている。

今回の政治的混乱の背景として、(1)もともと2022年に行われた大統領選挙において得票率が対立候補と0.7%という僅差での勝利であったことに加え、24年4月の総選挙においても与党が敗北し、国会の野党支配が深化するなど保守・進歩が厳しく対立していたこと(2)尹大統領の政治経験が不足するなかで与党内部の分裂が生じ、そうしたなかで、野党側が閣僚の弾劾案を乱発するなど議会運営が進まず、大統領の孤立とストレスが加重されたこと――などがある。

そして、25年度予算案が野党の反対により否決されたことが政治的混乱の引き金になったと指摘されている。

■ 韓国が直面する「外患内憂」

韓国は内外で多くの課題に直面している。対外的な関係では、韓国はこれまで輸出主導型の成長を実現してきたが、世界的に自由貿易体制が危機にひんするなかで多国間の自由貿易協定の締結などへの取り組みに出遅れた。また、半導体や電気自動車(EV)バッテリーなどの高付加価値製品のサプライチェーンを米中双方に多く依存しており、貿易戦争の影響を最も受けやすいことから、今後はどのようにサプライチェーンを再編し、国内の産業構造を転換して生き残っていくかも課題である。国内では、急速な高齢化が進展する一方で社会保障制度の整備が追い付いておらず、家計債務の増加など、内需に構造的制約も抱えている。

尹大統領は成長戦略として、年金、医療、教育、労働分野における改革を掲げたものの、政治経験が十分ではないなかで、これらの政策課題に対して野党からの妥協・譲歩を十分に引き出すことができなかったとみることができる。

■ 日韓関係の展望

尹大統領は、日韓関係の改善に大きく寄与した。現在では、文在寅政権時代に執られた反日政策に韓国のメリットは乏しかった、と考える人も増えている。日韓を取り巻く安保環境の厳しさなどからも、当時の状況に戻ることは考えにくい。

今後、政権交代によって、対日関係については、(1)尹大統領が日本に譲歩し過ぎたとの批判の提起(2)北朝鮮情勢や米中対立のなかで、現実論として日本との関係強化の重要性の強調(3)韓国が国際的な存在感を発揮するために日本を利用しようとするグループと反日政策を主張するグループとの対立――の三つのシナリオが想定される。

日本と韓国は、安全保障上、あるいは経済安全保障上の観点から大局的見地に立って対話を怠らず、互いに妥協しながら連携を深めていくことが重要である。

【国際協力本部】

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