
田尻氏
経団連は1月17日、東京・大手町の経団連会館で、GX2040ビジョン(ビジョン)、エネルギー基本計画(エネ基)、地球温暖化対策計画(温対計画)に関する説明会を開催した。経済産業省の田尻貴裕大臣官房審議官、同省GXグループの西田光宏GX投資促進課長、資源エネルギー庁長官官房の小高篤志戦略企画室長、環境省地球環境局の伊藤史雄脱炭素社会移行推進室長から、パブリックコメントに付された(1月26日に受け付け終了)同3文書の政府案について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ GX2040ビジョン
2020年10月に菅義偉内閣総理大臣(当時)が2050年カーボンニュートラル(CN)を宣言して以降、政府は、「GX実現に向けた基本方針」の策定(23年2月)をはじめ、グリーントランスフォーメーション(GX)・エネルギー政策を推進してきた。近年、世界各国で強く意識されるようになってきたのが、自国の産業競争力強化と、その基盤としてのエネルギー政策の重要性、そして両者の不可分一体性である。
こうした認識のもと、GXを中心とする産業政策の方向性を示し、GX投資の予見可能性を高めるべく、エネ基・温対計画と一体的にビジョンの案を取りまとめた。
ビジョンでは、「新たなGX事業が次々と生まれ、日本経済の強みであるフルセットのサプライチェーンが、デジタルトランスフォーメーション(DX)により高度化された産業構造」を目指すべき姿として掲げ、30年にわたる日本経済の停滞を打破すべく、具体策を整理している。
カギとなる取り組みとして、海外との連携による「フロンティア領域の金の卵」の探索・特定・商用化、スタートアップ支援、省エネを中心とした中堅・中小企業のGXの推進等を記載している。
また、半導体やグリーンスチールといったGX製品・サービスには脱炭素電力等のクリーンエネルギーを多く利用することが想定されるが、日本では、クリーンエネルギーの供給拠点に地域偏在性がある。脱炭素電源の供給拠点に、新たな産業を集積させていく観点から、GX産業立地政策にスピード感を持って取り組んでいく。
成長志向型カーボンプライシング構想については、排出量取引制度が26年度から、化石燃料賦課金が28年度から導入されることが決定している。排出量取引制度については、一定規模以上の企業に一律の参加義務を課すことや排出枠の上下限価格の設定等を内容とするGX推進法の改正法案を今次通常国会に提出し、制度の具体化を図りたい。
■ エネルギー基本計画
基本的視点としてS+3E(安全性を大前提とする安定供給、経済性、環境適合性のバランス確保)を堅持したうえで、エネルギー安全保障を取り巻く近年の状況変化を踏まえ、エネルギーの安定供給を第一とすることを強調した。
40年に向けた政策の方向性としては、特定の電源や燃料に過度に依存しない、バランスの取れた電源構成を目指していくこととした。とりわけ、DX・GXの推進により電力需要が増大することが見込まれるなか、再生可能エネルギーか原子力かの二項対立ではなく、脱炭素と自給率向上に資する電源として、共に最大限活用する方針を明確にした。
同時に、次期NDC(国が決定する貢献)の水準を踏まえ、40年度の電力需給見通しを提示した。新たなNDCが達成可能なケースのほか、実現に至らないシナリオも参考値として提示し、不確実性に備えている。
■ 地球温暖化対策計画
わが国の次期NDCとして、現行の30年度目標と50年ネットゼロを結ぶ直線的な経路を基に、35年度60%削減(13年度比)、40年度73%削減(同)を政府案として掲げた。2040年という不確実性の高い将来を見据えた際、対策の積み上げによる目標設定は難しい。そのため13年度からのフォアキャスト、50年ネットゼロからのバックキャストの両面からの観点も踏まえ策定している。
同時に、次期NDCの達成に向けて必要となる対策・施策をエネルギー転換や地域・暮らし等の分野で整理した。
これらの対策・施策をビジョン・エネ基と一体的に実施するとともに、進捗状況等に関する定期的なフォローアップを通じた柔軟な見直し・強化を図っていく。
【環境エネルギー本部】