
髙濵氏
経団連は1月20日、東京・大手町の経団連会館で宇宙開発利用推進委員会宇宙利用部会(山品正勝部会長)を開催した。経済産業省製造産業局の髙濵航宇宙産業課長から、宇宙産業の変革に向けた考えや取り組みについて、衛星データの利活用を中心に説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 宇宙産業の変革に向けた取り組み
わが国の「宇宙産業を変革する」という点は、言うはやすしであるものの、翻って宇宙産業の現状を見ると、データ利用が少ない、打ち上げ機会が少ない、衛星の生産が少ない――という、いわば「三すくみ」の構造にある。
このようななか政府は、2030年代早期をめどに、通信・衛星データ利用サービスの社会実装(30件以上)をはじめ、国内民間企業等による衛星システム構築(5件以上)、基幹ロケットおよび民間ロケットの国内打ち上げ能力(年間30件程度)などについて、それぞれ重要業績評価指標(KPI)を設け、わが国の宇宙市場規模を20年度比で倍となる8兆円を目標に、「好循環」な構造へと転換していくことを目指している。
この達成に向け経産省では、アジアにおける宇宙経済圏構築、新たな宇宙ビジネスの開拓、世界で戦える宇宙機器産業への変革を柱とした施策を展開している。あわせて、宇宙戦略基金を活用するなど、衛星データの利活用促進、衛星の試験設備やロケットのサプライチェーンの強化を図っていく。
■ 衛星データの利活用
経産省として、衛星データの利活用を促進していくために、(1)衛星データはツールの一つに過ぎない(2)世界で戦えるプレーヤー(3)国産衛星である必要なし――という3点を指摘したい。
衛星データは、社会的・地域的課題を解決するための一つの道具である。むしろ顧客の課題解決やありたい姿の実現に寄り添ったサービスを企業が提供できているかが重要であり、衛星データの利活用ありきで考えてはならない。
世界で戦えるプレーヤーを目指すために、わが国企業が持つ課題解決力とアジアの成長を結び付けた好循環を形成していく。その意味で、アンカーテナンシー(政府による需要の下支え)等としての国内の官需に専ら目を向けることは適切でない。これに加えて、民需・外需という、より「広がる市場」を狙って、世界で戦える企業になるよう、政策的支援を展開していく。
経産省は、「国産衛星を用いたサービス」ではなく、「競争力のあるサービス」を通じて、わが国企業が市場を獲得することを目指している。ただ、どの衛星を用いるかを検討する際には、必ず、国産衛星を含めて比較してほしい。競争力あるサービスを展開する日本の企業によって市場の獲得が進めば、国産衛星が採用される可能性もおのずと高まっていく。逆に、競争力がないサービスで市場を取れないと、国産衛星が採用される可能性はゼロである。競争力あるサービスで、まずはしっかりと市場を獲得してもらいたい。
【産業技術本部】