
古川氏
経団連は1月21日、東京・大手町の経団連会館で消費者政策委員会消費者法部会(土屋達朗部会長)と同企画部会(楯美和子部会長)の合同会合を開催した。内閣府消費者委員会事務局および消費者庁から、「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会」の中間整理と今後の取り組みについて、説明を聴くとともに意見交換した。消費者庁の古川剛消費者制度課長の説明の概要は次のとおり。
消費者庁は、改正消費者契約法および改正消費者裁判手続特例法が2022年5月に成立した際の附帯決議を受け、消費者法制度の見直しに向けた検討を開始した。この決議を契機に、既存の枠組みにとらわれない抜本的かつ網羅的なルールの設定を目指している。この一環として、消費者庁と内閣府消費者委員会は23年12月から、「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会」を開催し、法制度のあり方について議論を進めている。
専門調査会では、主に三つのテーマについて議論を進めている。第一は、消費者が関わる取引を幅広く規律する法制度のあり方である。第二は、デジタル化による技術の進展が消費者の取引環境に与える影響についての基本的な考え方である。第三は、ハードロー(法的拘束力のある規制)とソフトロー(事業者の自主規制のルール等)、民事・行政・刑事法規定などを組み合わせた規律のあり方である。
専門調査会は24年10月に中間整理を公表し、消費者取引全体の法制度のあり方について三つの論点を示した。一つ目は、消費者法制度における消費者の脆弱性という概念の捉え方である。二つ目は、「客観的価値実現」という取引環境や取引結果の安全な状態の確保の位置付けである。三つ目は、金銭の支払いに限られない消費者取引の拡大(情報、時間、関心・アテンションの提供)への対応のあり方である。
また、中間整理では、デジタル化の進展の影響に関する考え方を示した。デジタル取引には、時間、空間、資材などの物理的障壁がほとんどないという特徴がある。これを踏まえ、リアル取引と異なる規律が必要となる場面や、規律が整備されていない場面を整理した。
専門調査会は、25年夏ごろに最終取りまとめを公表する予定であり、その内容には消費者法制度における規律の内容、手法、担い手のあり方が含まれる。現在は、行動経済学、技術論、国際関係、ESG(環境・社会・ガバナンス)、金融など各分野での取り組みを参考に、消費者法制度においてどのように考えることができるかについて議論を進めている。
経済界には、優良な事業者が取り組んでいる方法や、消費者法制度における規律のあり方などについて、意見を伺いたい。消費者庁としても、経済界と一層連携を深めて、消費者行政を展開していきたい。
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説明の後、参加者との間で、消費者法制度のあり方、事業者が自主的に消費者保護に取り組むためのインセンティブ、事業者に求められる取り組み、今後のスケジュールなどについて意見交換した。
【経済基盤本部】