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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年2月13日 No.3671 グローバル人材マネジメントに関する企業の取り組み -労働法規委員会国際労働部会

経団連は12月6日、労働法規委員会国際労働部会(市村彰浩部会長)をオンラインで開催した。PwCコンサルティングの長谷部司ディレクターからグローバル人材マネジメントの概要について、また、テルモの足立朋子経営役員CHRO(最高人事責任者)からグローバル人財戦略の取り組みについて、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ グローバル人材マネジメント概論(長谷部氏)

企業がグローバル事業を推進していくためには、国・地域を超えて人材を確保し、育成・活用していく「グローバル人材マネジメント」が重要になる。その際のマネジメントの基盤として、(1)組織戦略に基づくガバナンスの構築(2)企業グループ全体での人事制度の共通化(3)グローバルリーダーの育成(4)人事機能の高度化・システム統合――といった要素を一貫して整備することが欠かせない。

具体的には、グローバル企業の本社が直接把握できる業務の数には限りがあるため、現地法人や事業部と本社の間での権限移譲・ガバナンスの分担が求められる。また、近年のジョブ型人事や等級の統一に見られるように、タレント育成や人材配置を最適化するため、人事制度をグローバルで共通化する必要性が高まっている。加えて、企業価値を継続的に向上させるため、組織の将来像に基づいて重要な役職を定義し、後継者候補を選定・育成するサクセッションプランニングも重要となる。そして、デジタル技術が急速に発展するなか、システムで実現可能な内容から人材マネジメントのあり方を考える時代になってきている。

グローバル人材から選ばれる魅力的な企業になることも重要である。しかし、日本人以外の海外人材にとって、日本本社で働くキャリアパスは見えにくい場合が多い。日本本社の組織改革を進めつつ、まずは海外事業の地域統括を設置・活用し、現地法人幹部のキャリアパスを明示することも一案である。グローバル人材競争が激化するなか、駐在員管理にとどまらず、グローバル視点で人事組織を構築していくことが求められている。

■ テルモの取り組み(足立氏)

テルモは、「医療を通じて社会に貢献する」を企業理念に掲げ、世界160カ国以上で医療機器や医薬品を製造販売している。M&Aを積極的に実施してきた経緯もあり、海外売上比率は約80%と高い。以前は、日本と海外法人で別々の人事制度を運用し、グローバル共通での人財育成や登用は少なかった。しかし、グローバルの人財競争に伍するべく、経営戦略に同期したグローバル人財戦略を2018年から段階的に拡大してきた。

人財戦略は、(1)グローバルリーダーの育成(2)常に新しいことに挑戦して学ぶ「グロース・マインドセット」の醸成(3)多様な人財の活躍(4)戦略的重要性の高い新規スキルの獲得――の四つの目標を掲げている。(1)(2)に関しては、グループ横断のリーダーシップ育成プログラム「Mirai」を推進し、適切なマインドセットを育むとともに、グローバル人財会議でグループ各社が推薦する人財情報を議論し、人財の育成や登用につなげている。(3)に関しては、医療現場や患者の多様なニーズに対応するためのDE&I施策の骨格となるフィロソフィー、ガイディングプリンシプル、ガイドラインを策定している。

国内外の人財に対しては、当社で働く価値や魅力をブランディングの観点から明確化している。世界の競合他社と比べて、ボトムアップの意思決定や自律性を尊重し、短期的利益よりも、患者志向の治療を重視する長期的なパーパスを優先するなど、現場での成長機会が多いと自負している。

また、当社の成長戦略を実現するために日本人財の獲得・開発もより強化すべきと考え、人事制度を22年から段階的にジョブ型へ転換した。新人事制度のコンセプトは、(1)社員が主体的にキャリアを考え、自らの意志と能力でキャリアアップの機会に挑戦できる(キャリア自律)(2)事業戦略に基づいて職務を定義し、ふさわしい人財をアサインする(適所適材)(3)将来のキャリアや必要なスキル獲得の実現に向けた成長施策の提供(成長支援)――の三つである。この実現のため、課長職ポジションへの公募制、AIなどの技術を活用してキャリア実現に向けた成長機会を一人ひとりに与える「タレント・マーケットプレイス」――などの導入を開始している。

今後も、経営方針に同期した人事戦略を加速し、「人財の力で勝つ」ことで、医療業界の課題解決に貢献していく。

【労働法制本部】

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