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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年2月6日 No.3670 首都直下地震等対策推進タスクフォースを設置 -第1回会合を開催~首都直下地震対策における官民の役割について聴く

渡辺氏

日本各地で大規模災害が発生し、災害の激甚化・頻発化への対応が求められるなか、政府は2025年夏ごろをめどに「首都直下地震緊急対策推進基本計画」を改訂する方針である。また、石破茂内閣総理大臣は、災害対応の司令塔として26年度中に防災庁の設置を目指すと表明している。

こうした状況を踏まえ、首都直下地震を念頭に置いた官民の取り組み等について検討すべく、経団連は、危機管理・社会基盤強化委員会のもとに「首都直下地震等対策推進タスクフォース」(光田毅座長)を設置し、12月23日、東京・大手町の経団連会館で第1回会合を開催した。名古屋工業大学の渡辺研司教授から、首都直下地震対策における官民の役割について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 自然災害の激甚化・頻発化を踏まえた企業の事業継続力の強化

近年、気候変動に伴う自然災害が頻発化・激甚化、被災・復旧の長期化による災害の複合化といった「ハザードの加速的な変化」が生じている。また、都市部への人口集中や都市周辺地域における宅地造成など、社会経済活動や土地利用の変化により、災害の被害が増幅されている。

こうした状況下では、「想定外」を日常化する視点が必要である。企業では、第一に、危機や損失のレベルに応じた意思決定方法や指揮命令系統の仕組みを事前に構築しておくことが求められる。第二に、サプライチェーンの一部の被害が企業、そして経済全体に波及するリスクがあるなかで、あらかじめ過去の災害連鎖を分析しておくことや、一部のサプライチェーンが被害を受けてもその機能を代替手段で再現できるようにしておくことが重要である。第三に、緊急時の資金調達力についても検討しておく必要がある。被災した中小企業は、被災後の経営資源の再配分が難しく、廃業に至るケースが多い。自力での資金調達こそが地域の復旧・復興に資するため、被災企業への多様なファイナンスの仕組みを官民で用意しておくことが重要である。

■ 官民連携による災害対応と防災庁への期待

大規模災害時の事業継続に向けて、企業や自治体は官民でそれぞれ事業継続計画を策定している。しかし、各主体の計画はあくまで個別最適である。有事に各主体の計画が同時に発動された場合、道路交通やエネルギー、宿泊施設等の限られたリソースを必要な分確保することは難しくなる。全体として実効性のある計画とするためには、官民が個別に計画を策定するのでは不十分であり、地域における主要な関係者が参画する仕組みの構築等を通じて、平時から情報共有や議論を重ねることが重要である。官民対等な立場での連携体制が構築されれば、地域全体の競争力や企業価値の向上にもつながる。

また、災害の日常化を踏まえ、自助・共助・公助の役割を見直すことも必要である。人口の偏在や少子高齢化により公助への期待が高まる一方で、人員不足や予算減少等を原因として、行政の災害対応能力は低下している。防災庁の設置に向けては、各省庁の地方局が持つ機能の有機的な統合、国土交通省や自衛隊との柔軟な指揮命令系統の確立、民間への権限移譲等、官民の役割分担について、しっかりと議論すべきである。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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