
西尾氏
経団連は1月8日、東京・大手町の経団連会館で、世界銀行の西尾昭彦開発金融総局担当副総裁との懇談会を開催した。グローバルサウスを巡る世銀の役割について、説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 存在感を増すグローバルサウス
グローバルサウスについて正確な定義はないが、途上国、新興国、BRICSなどを内包した概念である。近年、グローバルサウスと呼ばれる国々は、ブラジルが2024年にG20サミット、インドが23年にグローバルサウスの声サミットを開催するなど、グローバル経済・政治の領域で存在感を増している。
また、国際通貨基金(IMF)のデータによれば、購買力平価ベースでBRICS諸国の全世界GDPシェアはすでにG7を上回るなど、国際経済の力学は急速に変化している。また、これまでグローバルサウス諸国は投融資を「受ける」側であることが多かったが、世界の上位15の国・機関による途上国への公的融資額を見ると、インドやサウジアラビアも含まれるなど、ドナーとしての存在感を増しているのが現状である。
■ 増加する途上国への直接投資
過去20年間の世界の対内直接投資は、振れ幅を伴いながらも先進国向けが多かった。しかし近年は、途上国への直接投資が先進国への直接投資を上回るようになっている。一方、日本は新興・途上国にも直接投資をしているものの、例えば23年の地域別割合を見ると、39%が北米、26%が欧州など、対外直接投資の大半は先進国に集中している。
■ 開発金融機関の取り組み
民間が低所得国に投資する場合、債務の脆弱性やガバナンスの問題などさまざまなリスクが障壁になる。そうしたリスクへの対応に当たっては、開発金融機関(DFI)が一助となる。DFIには、多くの国の政府や国際機関からなる多国間DFI、特定の地域や国の開発プロジェクトに特化した二国間DFIなどが存在する。世銀グループは、途上国への主要な資金源であり、世銀と世銀グループの国際金融公社(IFC)・多数国間投資保証機関(MIGA)は、過去20年間で1.4兆ドルの資金を提供してきた。
世銀グループは、途上国でのビジネス環境の向上や民間セクターの開発を促す政策改革を支援している。最近では、アジェイ・バンガ総裁のリーダーシップのもとで、世界各国の投資環境について分析して評価する「Business Ready」や、グローバル課題への対処に民間資本を呼び込む枠組み構築に向けて「民間セクター投資ラボ」を設立した。世銀グループの国際開発協会(IDA)は、第21次増資で15兆円を超える額を調達している。その70%近くをアフリカに提供し、貧困削減や経済成長の実現を通じて、民間企業の進出の素地を整えることに貢献することとしている。
【国際協力本部】