1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2025年1月16日 No.3667
  5. 医療等情報の二次利用に係る現状と今後の対応方針

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年1月16日 No.3667 医療等情報の二次利用に係る現状と今後の対応方針 -イノベーション委員会ヘルステック戦略検討会

西川氏

経団連は12月4日、東京・大手町の経団連会館でイノベーション委員会ヘルステック戦略検討会を開催した。厚生労働省大臣官房の西川宜宏企画官(医政局特定医薬品開発支援・医療情報担当参事官室)から、医療等情報の二次利用に係る現状と今後の対応方針について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 医療・介護DXのさらなる推進

経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太方針2024)では、より質の高い効率的な医療・介護を提供するとともに医療分野のイノベーションを促進するため、政府を挙げて医療・介護DX(デジタルトランスフォーメーション)を確実かつ着実に推進することが掲げられた。同方針のもと、厚労省では「医療DXの推進に関する工程表」に基づき、全国医療情報プラットフォームや医療等情報の二次利用促進などの取り組みを実効的かつ一体的に進めている。

■ 電子カルテ情報の二次利活用

これまで、わが国にはカルテ情報に関して、二次利用可能な悉皆性のあるデータベース(DB)は存在しない。そのため、診療所を含む医療機関における患者アウトカム情報の長期にわたる分析が困難なうえ、医薬品等の安全性検証や研究開発、または疫学研究などに電子カルテ上のデータを十分に活用できていないという課題が生じている。

こうした課題を解決するため、全国医療情報プラットフォームとして構築を進めている「電子カルテ情報共有サービス」で収集する電子カルテ情報(3文書6情報)を(1)個人を特定できない形に加工したうえでDBに格納(2)匿名化情報または仮名化情報として企業や研究者等に提供――することで、公益性の高い研究などに活用できるようにしていきたい。

同サービスは、2025年1月から全国10カ所の地域でモデル事業開始に向けて、調整中である。法律に位置付けたうえで、25年度から本格稼働できるようにしていきたい。

■ 医療・介護関係のDBの利活用促進

わが国では、これまで厚労大臣が保有する医療・介護関係のDB(公的DB)の情報については匿名化した情報での利活用を進めてきた。しかしながら、匿名化情報では特異値や記述が削除・改変されており、精緻なデータ分析を行ううえで限界が生じている。またデータ利活用の面では、データ操作の際に厳しい環境要件が求められるため、研究者側の利用申請に係る負担が大きいという指摘もある。

一方、氏名など個人を識別できる情報は削除したうえで医療データ部分は削除・改変を行わない「仮名化情報」が一定の手続きのもとで使用可能となれば、研究利用における有用性が大きく向上すると期待される。実際に、データ利活用が進んでいる海外では、仮名化情報の利活用と仮名化情報データ間の連結解析が可能になっている。

わが国においても、公的DBで仮名化情報を利用・提供できるようにし、さらに電子カルテの情報と連結して解析できるようになれば、医薬品・医療機器が市販された後の有効性・安全性の評価に加え、感染症流行時の適切な医療体制構築、医療・介護・障害福祉サービスの質の評価への活用も期待できる。現在、公的DBの仮名化情報の提供と、仮名化情報同士の連結解析を可能とするための法改正に向けて準備を進める一方、欧州の仕組みも参考にしつつ、公的DBの二次利用申請・審査の一元化について検討している。

【産業技術本部】

「2025年1月16日 No.3667」一覧はこちら