
松尾氏

日下部氏
経団連は12月9日、東京・大手町の経団連会館で企業行動・SDGs委員会企画部会(上脇太部会長、郡司典子部会長)を開催した。外務省総合外交政策局の松尾裕敬審議官、同省国際協力局の日下部英紀審議官から、国連「未来サミット」の模様やSDGsに関する日本の取り組みについて説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 未来サミット
2024年9月に米国の国連本部で「未来サミット」が開催された。グローバルサウスが台頭し、新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、21年9月にアントニオ・グテーレス国連事務総長が、国際社会が抱える諸課題への対応を示す「我々のコモンアジェンダ」を提出、同サミットの開催を提案したことを契機とする。
22年にロシアによるウクライナ侵略等が発生し、国際社会が分断され、国連の信頼度が低下する状況において、同サミットの目的は、国連に対する信頼を回復し、国際協調により、SDGs等の目標の達成や新たな課題に効果的な対応が可能であることを示すことであった。
成果文書として採択された「未来のための約束」は、前文と五つの章((1)持続可能な開発と開発資金(2)国際の平和と安全(3)科学技術・イノベーションおよびデジタル協力(4)若者および未来世代(5)グローバルガバナンスの変革)から構成され、現在と未来の世代のニーズと利益を守るため、56の行動を取ることを表明している。
SDGsについては、各国が行動を加速する必要性がある点を強調する。加えて30年までに、そして30年以降に、持続可能な開発をいかに促進するか(ポストSDGs)に関し、27年の国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)で検討することが初めて明記された。
■ SDGsの進捗状況と最近の日本の取り組み
国連の「SDGsレポート2024」によると、国際社会全体では、SDGs17目標の達成状況が順調なのは17%のみで、3分の1以上は停滞または後退している。新型コロナや紛争、気候変動が深刻な影響を与えていると考えられる。
国別では、ドイツのベルテルスマン財団と持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)が発表した「Sustainable Development Report 2024」によると、対象166カ国のうち、日本のSDGs達成度は18位である。経年スコアは緩やかに伸びており、SDGsのターゲットのうち、半分近くは達成もしくは順調に進捗している。
23年12月、日本政府は、30年までにSDGsを達成するための中長期的な国家戦略である「SDGs実施指針」を改定した。国際社会全体がさまざまな複合的危機に直面し、SDGs達成に向けた進捗は大きな困難に直面しているが、30年までにSDGs達成を目指すとの大きな方向性に変わりはない。重点事項は、(1)持続的な経済・社会システムの構築(2)「誰一人取り残さない」包摂社会の実現(3)地球規模課題への取り組み強化(4)国際社会との連携・協働(5)平和の持続と持続可能な開発の一体的推進――である。実施に当たっては、日本として、30年以降を見据えた国際的な議論も主導する旨記載している。
現在、NGOや有識者等広範な関係者から成る「SDGs推進円卓会議」での議論も踏まえ、自発的国家レビュー(VNR=Voluntary National Review)に向けた検討を進めている。VNRは、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」において、SDGsの進捗状況に関する国家主導の自主的・定期的なレビューを各国に促すものであり、日本政府は25年7月のHLPFの場での発表を予定している。ビジネスなど、各ステークホルダーの取り組みも記載予定であるので、経団連からも意見を寄せてもらいたい。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】