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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年1月16日 No.3667 高等専門学校における人材育成の取り組み -教育・大学改革推進委員会企画部会

経団連は12月4日、教育・大学改革推進委員会企画部会(平松浩樹部会長)をオンラインで開催した。高等専門学校(高専)における人材育成をテーマに、国立高等専門学校機構の谷口功理事長、神山まるごと高等専門学校の田中義崇パートナー・寮ディレクターから、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 次世代人材の育成に向けた高専の挑戦(谷口氏)

高専は、中学校卒業後に5年一貫教育を行う高等教育機関である。社会実装を念頭に置いた高等専門教育を通じて、実務能力と創造性で社会の発展・変革に貢献するエンジニアの育成に取り組んでいる。特に実験・実習やコンテストへの参加を通じた実践力の養成は高専教育の特徴である。高専卒業生の就職率はほぼ100%を誇り、高専で培われた専門性と高い能力は、産業界等から長年にわたって高く評価されている。

国立高専機構では、高専教育の質保証の観点から、各高専に共通のモデルコアカリキュラム(MCC)を策定し、高専の授業の6割がMCCに基づいて行われている。その一方、残りの授業で地域性や特色を生かした教育が実践されるなど、各高専の独自性も重視している。

最近では、国際社会を見据え、専門教育だけでなく、語学・社会学を含むリベラルアーツ教育の充実を進めている。また、AI・数理データサイエンス、サイバーセキュリティ、ロボット、IoT、半導体等、最新の基盤技術を各専門学科に取り入れるなど、教育の高度化を図っている。さらに、アントレプレナーシップ教育等では、地域の企業や地方自治体等と連携して、地域課題の解決に取り組んでいる。加えて、国立高専機構では、高専制度の海外展開に取り組んでおり、モンゴルやタイ等のアジアを中心に高専が設置されるなど、技術者教育分野で国際貢献を果たしている。

産業界には、ジョブ型採用の導入と併せて、高専卒初任給の大卒と同水準までの引き上げ、あるいは手当の付与をお願いしたい。高専は、引き続きさまざまな挑戦を通じて、変化する社会のなかで活躍する人材を育成していく。

■ 神山まるごと高専の挑戦(田中氏)

神山まるごと高専は、起業家の輩出を目的に、2023年4月2日、徳島県神山町という人口約5000人の中山間地域に開校した、デザイン・エンジニアリング学科1学科制の私立の高専である。開校2年目の現在、全国から約80人の学生が、全寮制の就学スタイルのもと在籍している。スカラーシップパートナー参画企業11社から出資を受けて奨学金基金を組成し、その運用益を給付型奨学金に充てることで、学費を実質無償化している。

同校は、育てる人物像として「モノをつくる力で、コトを起こす人」を掲げ、テクノロジー、デザイン、起業家精神を学ぶ独自のカリキュラムを組んでいる。一方で、大学の一般教養に該当するリベラルアーツの科目も充実させている。

入学後最初の授業で、「神山町にある地域課題の解決」をテーマにアイデアソン、ハッカソン(注)、ピッチを行う集中講義を行うほか、地域や企業とのタイアップ事業を通じて、社会に目を向けさせている。また、経営者・起業家と談話する企画を実施し、学生が起業を身近に感じられるようにしている。

産業界には、企業版ふるさと納税の活用を通じたソーシャルセクターへの資金提供と高専卒の地位向上に資する待遇をお願いしたい。同校は、「神山から未来のシリコンバレーを生み出す」というビジョンの実現に取り組んでいく。

(注)特定のテーマについて、短期間で、アイデアを出し合い協議(アイデアソン)した後、アイデアと技術を組み合わせた開発を実施(ハッカソン)するプログラム

【教育・自然保護本部】

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