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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年1月16日 No.3667 タイの経済と外交の見通し -日タイ貿易経済委員会

浅見氏

経団連は12月5日、東京・大手町の経団連会館で日タイ貿易経済委員会(石井敬太委員長、鈴木純委員長)を開催した。法政大学法学部国際政治学科の浅見靖仁教授から説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

近時、経済、外交の両面において、タイにおける中国の影響力が増している。

経済面に関して、現在、タイ政府は電気自動車(EV)やクリーンエネルギーなどの先端産業の振興を推進している。これに中国企業が積極的に応え、進出しているのに対し、日本企業は出遅れているという印象を多くのタイ人が抱いている。中国企業は2024年からタイ工場でのEV生産を本格的に開始している。家計債務問題の深刻化により新車販売が不調なこともあり、日本車の販売台数は急減している。製造業での日本企業のプレゼンス低下の一方、店舗形態での小売業では日本企業が健闘しているが、eコマースの分野では中国系企業が席巻している。

外交面でも、中国はタイに積極的にアプローチしている。24年8月に就任したぺートンターン首相は、石破茂内閣総理大臣とは10月のASEAN首脳会議の際に立ち話をしたにとどまる一方で、中国の李強首相とは10月と11月に会談を行い、習近平国家主席ともAPEC首脳会議の際に会談している。25年は中タイ国交樹立50周年であり、両国間の首脳会談では、さまざまな記念行事を開催し、協力関係を一層強化することに合意している。外交面でも中国の影響が拡大するなか、日本の出遅れ感が否めない。

タイは伝統的に特定の国に依存することはできるだけ避け、状況の変化に応じて大国間のバランスを巧みに取ってきた。中国との関係は深めつつも、中国一辺倒になることは避けるべきだとも考えている。

24年にタイは、BRICSとOECDへの加盟を希望することを正式に表明した。BRICSへの加盟については、中国だけでなくインドとの関係強化も目的としている。タイでは中国のカウンターバランス役として、インドに対する期待が高まっている。

観光業はタイ経済の重要な柱の一つであるが、来タイ旅行者数においても、隣国のマレーシアを除けば、24年は中国が第1位、インドが第2位となる見通しである。OECDへの加盟にもさまざまな思惑が込められているが、中国一辺倒になることを避けるという意味合いもある。

内政については、現ペートンターン政権が下院の任期が満了する27年前半まで続く可能性が高い。ただし、連立政権内の勢力争いや国王と軍の関係の変化などの兆しもあり、引き続き動向を注視していくことが必要である。

【国際協力本部】

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