2025年は、デフレからの完全脱却、金融政策の正常化、そして本格的な「金利のある世界」の到来が見込まれる。そこで12月17日、経済財政委員会(柄澤康喜委員長、鈴木伸弥委員長)において「金利のある世界」と企業行動のあり方に関する報告書を取りまとめた。概要は次のとおり。
■ 企業の現状認識

(図表のクリックで拡大表示)
「金利のある世界」に対する企業の現状認識を把握すべく、全会員企業を対象に「『金利のある世界』に関するアンケート」を実施した(調査期間24年7月30日~9月17日。回答数184社)。その結果、企業は「金利のある世界」が本来あるべき経済の環境であることなどを理由に、約65%の企業が「ポジティブ」に捉えていることが分かった。また今後3~5年の間、多くの企業が望ましいと考える短期金利水準は0%超~1%、物価上昇率は2%程度、為替水準は1ドル120~140円程度という結果となった(図表1)。
■ 「金利のある世界」の特徴

(図表のクリックで拡大表示)
報告書では、「金利のある世界」の特徴を二つ挙げた(図表2)。
一つ目は、「健全な価格メカニズム」の回復、すなわち良い商品やサービスには相応の価格が付くことである。デフレ経済下では、高付加価値の商品やサービスを提供しても、なかなか価格を上げられなかった。しかし「金利のある世界」では、高付加価値商品・サービスには高い価格が付きやすい経済環境になるため、企業にとっての付加価値創出のインセンティブが高くなる。
二つ目は、「時間の価格」の上昇である。「金利のある世界」では、金利上昇などにより資金調達コストは上昇していく。そのため、これまで以上の付加価値創出が求められる経済環境になる。
■ 「金利のある世界」の絵姿

(図表のクリックで拡大表示)
これらを踏まえると、企業は、より一層の「投資」を通じ、金利や物価上昇率を上回る付加価値を競い合って創出することが求められる。いわば「金利のある世界」は「価値『競創』」経済といえる。
また望ましい「金利のある世界」の姿として、企業や個人による「『1』%超の生産性向上」、政府・日銀による「『2』%程度の適度な物価上昇」の実現を通じて、企業の「『3』%超の付加価値創出」の実現を提示した(図表3)。このうち「1」と「3」は1990年代以前も含めた平均値だが、日本のマインド、経済のノルムを変えようというスローガンである。
■ 企業が取り組むべきこと
図表3で示した「1、2、3」のうち、生産性向上に向けては人的・物的資本の両面の「投資」、付加価値創出に向けては各ステークホルダーに対する適切な取り組み、さらにヒトやモノ・カネの成長領域への円滑な移動が求められる。
【経済政策本部】