経団連は4月11日、東京・大手町の経団連会館でダイバーシティ推進委員会企画部会(工藤禎子部会長)を開催した。「Marriage For All Japan―結婚の自由をすべての人に」の松中権理事(work with Pride代表)ならびに寺原真希子代表理事・弁護士から、LGBTQ+や同性婚の法制化をめぐる動きについてそれぞれ説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
■ LGBTQ+の最新情報~企業が社会から求められるもの(松中氏)
LGBTQ+は、目に見え難いマイノリティであるが、実際には人口の1割弱ともいわれている。「身近な存在」であるとの理解を広げるとともに、「多様な存在」であることを踏まえて、制度を見直していく必要がある。日本以外のG7諸国では、(1)LGBT差別禁止法(2)婚姻の平等(同性婚)(3)トランスジェンダーの人権を保護する法律――といった、柱となる法整備が進んでいる。一方日本におけるLGBTQ+に関する法制度の進み度合いはOECDに加盟する35カ国中34位と大きく立ち遅れており、国連からも法改正や状況改善の勧告を再三受けてきた。
しかし、日本においても、司法の判断や世の中の意識において徐々に変化がみられる。例えば2023年にLGBT理解増進法が成立するとともに、婚姻の平等に関する訴訟の地裁・高裁判決、トイレ使用、性別変更の手術要件などに関連する訴訟の最高裁判決では違憲との判断が示されている。
こうしたなか、20年のパワハラ防止法の施行によって、SOGIハラスメント(注1)やアウティング(注2)への対応が事業主に義務付けられた。アクションを取らないことが、むしろ企業リスクとなっていく。このため企業には、職場での性的マイノリティへの取り組みの評価指標「PRIDE指標」や、企業経営者アライネットワークの「Pride1000」「東京レインボープライド2024」への参画など、今日からでも具体的なアクションを実行に移すことを期待したい。
■ 結婚の平等~同性婚の法制化(寺原氏)
現在、37の国・地域で同性婚が認められているなか、G7のなかで同性カップルに法的保障を与えていないのは日本だけである。同性カップルは法律婚ができないため、法定相続権をはじめさまざまな法的効果を得ることができない。社会的承認が得られないことにより生き悩む人も多く、特に10代の自殺念慮・自殺未遂が目立つ。世論調査では7割が同性婚に賛成だが、国会議員の賛成率は4割、とりわけ自由民主党の賛成率が圧倒的に低いため、なかなか法改正につながらない。
こうした現状を踏まえ19年、日本で初めて、法律上の性別が同性同士であるカップルの婚姻を認めていない現状が憲法に違反することを真正面から問う訴訟が提起された。その結果、六つの地裁判決のうち五つで違憲との判断が下された。唯一合憲判断を下した大阪地裁判決も将来の違憲可能性を明示している。さらに24年3月には札幌高裁が高裁判決としては初めて違憲と判断した。今後、最高裁判決に期待が寄せられる。
企業には、「世論の高まり」を国会や裁判所が実感できるよう、その橋渡しをすることが求められる。札幌高裁判決では、「Business for Marriage Equality」(同性婚の法制化に賛同する企業を可視化するキャンペーン)に賛同する企業が360社を超えていること(直近では486社)への言及があった。無関心は中立ではなく、差別への加担である。企業がアクションを取り、世の中が変わることを望む。
(注1)性的指向や性自認などに関して行われる嫌がらせ
(注2)本人の同意なく、性的指向などを第三者に言いふらす行為
【ソーシャル・コミュニケーション本部】