経団連は、官民協力のもとでアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)(注1)構想の実現を推進し、アジアのカーボンニュートラル(CN)化を進めるとともに、日本の経済成長につなげる方策を検討すべく、AZEC推進ワーキングチームを立ち上げた。
4月3日、東京・大手町の経団連会館で同ワーキングチームの初回会合を開催した。資源エネルギー庁の白井俊行国際課長から、AZECの意義や今後の取り組み方針等について説明を聴くとともに、意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ AZECの意義
世界全体のCO2排出量のうち約半分をアジアが占めるなか、世界のCN実現にはアジアでの取り組みがカギとなる。アジアの電力需要は今後も拡大する見通しであり、ASEANでは、2050年には現在の日本の発電量の約3倍の電力需要が見込まれている。ASEANの多くの国がCN目標を表明している一方、その電源構成は化石燃料に大きく依存している状況にある。そうしたなか、22年1月、アジアの国々と共に脱炭素化を目指す協力枠組みとしてAZECが提唱された。日本のグリーントランスフォーメーション(GX)の取り組みを、アジアにおける現実的な形での脱炭素化・経済成長につなげるうえで、AZECはその架け橋となり得る。
■ これまでの成果
23年3月、初のAZEC閣僚会合を開催した。前日に経団連と共催したAZEC官民投資フォーラムでは、脱炭素分野の協力に関するMOU(覚書)が多数発表された。同年12月にはAZEC首脳会合を開催し(注2)、「脱炭素・経済成長・エネルギー安全保障の同時実現」や「多様な道筋によるネットゼロ実現」といったAZEC基本原則を含むAZEC首脳共同声明に合意した。各国首脳からはAZECの活動への高い期待が表明され、パートナー国の現地メディアでも広く取り上げられた。
AZECパートナー国と日本企業の間ではすでに350以上の協力案件が進んでいる。その分野は、省エネや太陽光発電、バイオマス、水素・アンモニア等、多岐にわたる。
■ 今後の取り組み方針と経済界への期待
今後は、AZECパートナー国との政策協調、個別プロジェクト支援の両輪で取り組みを推進していく。政策協調に関しては、脱炭素ロードマップの策定やトランジションに資する技術リストの作成、トランジションファイナンスの推進、二国間クレジット制度(JCM)の利活用推進等を目指す。個別プロジェクト支援では、政府系機関や「グローバルサウス未来志向型共創等事業」を活用しながら、アジアの脱炭素化に資するクリーンエネルギー技術の普及を加速させる。さらに、対外発信等にも力を入れる。
日本の経済界には、ぜひAZECの基本原則に対する理解のもと、AZECのさまざまな取り組みを民間サイドから発信してもらいたい。また、民間サイドからAZECをサポートするために設立されたAZEC賢人会議(AZEC Advocacy Group)への協力もお願いしたい。さらに、グローバルサウス予算等を活用した個別プロジェクトのさらなる組成や、各国の事業環境の整備に求められる政策・制度などについて、経済界からの声・要望を踏まえながら、官民一体で制度整備にも取り組んでいく。
(注1)脱炭素を日本の力に~首相官邸ウェブサイト
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/copazec
(注2)AZEC首脳会合~首相官邸ウェブサイト
https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202312/18azec.html
【環境エネルギー本部】