経団連は3月29日、東京・大手町の経団連会館で産業競争力強化委員会(橋本英二委員長、澤田純委員長、岡藤正広委員長)を開催した。経済産業省の山下隆一経済産業政策局長から、経済産業政策の方向性について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 過去30年の日本経済・マクロ環境の変化
過去30年のデフレ下で、日本企業は、コスト抑制により利益を拡大するとともに、海外投資を加速させてきた。
マクロ環境では、世界で不確実性が高まり国際経済秩序が変動するなかで、各国は国内生産等を支援する産業政策を活発化させている。
■ 潮目の変化と「経済産業政策の新機軸」
足元では、過去最高水準の設備投資計画や、30年ぶりの水準での賃上げ、スタートアップの資金調達額増加など潮目の変化がみられる。
こうした国内外の潮流を踏まえ、経産省は、「経済産業政策の新機軸」を進めている。これは、官主導の伝統的産業政策ではなく、社会・経済課題の解決に向けた、ミッション志向の新たな産業政策として、大規模・長期・計画的な政策支援を行うものである。現在、そうした支援策により、半導体などを中心に多数の投資案件が動き出している。
■ 足元の政府の取り組み
「コストカット型経済」から「成長型経済」への転換を目指し、2023年末には総合経済対策と国内投資促進パッケージを取りまとめた。
同パッケージには、合計11府省庁・200強の国内投資推進策を掲載している。具体的には、グリーントランスフォーメーション(GX)経済移行債による投資促進策と規制・制度の見直しや、半導体の国内生産拠点整備支援、中堅企業の成長促進に向けた支援などを進めている。
■ 40年ごろに向けたシナリオ
日本経済が変化するチャンスを迎えるなか、積極的な産業政策をさらに展開し、継続することで、企業の予見可能性を高めることが重要である。中長期的かつ大局的な目線をそろえ、前向きな挑戦を後押しするために、現在、40年ごろに向けたシナリオの策定を進めている。
目指すべきは、国内投資・イノベーション・所得向上の好循環を継続することで、人口減少下でも、一人ひとりの所得が増え、誰もが生き生きとする豊かな社会を実現することである。そのために、日本を「世界の創造拠点」と位置付けつつ、世界中で稼いだ利益を国内に還流し、さらなる投資につなげることが重要である。
今後、個別産業の変化も含めて将来のシナリオを示し、必要な政策を取りまとめていく。
◇◇◇
山下氏の説明の後、提言「日本産業の再飛躍へ~長期戦略にもとづく産業基盤強化を求める」を審議した。
同提言は、日本経済が歴史的転換点を迎えるなか、長期的な視点での産業戦略のもとで日本産業を再飛躍させることを目指し、取りまとめたものである。40年ごろをターゲットにした「産業戦略2040」を国として策定することを求めるとともに、長期戦略のもとで取り組むべき具体的施策を整理しており、4月16日に公表した。
特に人手不足が深刻化するなかで、AIやロボットなどのデジタル技術を活用することが有効であり、それを支えるうえでも安価で安定的なエネルギーの供給が必要不可欠である。こうした産業基盤の強化に向けて、官民連携による国内投資を拡大することが重要である。
【産業政策本部】