経団連は3月22日、東京・大手町の経団連会館で開発協力推進委員会政策部会(木村普部会長)を開催した。三菱総合研究所の石田裕之主任研究員ならびに田中嵩大研究員から、説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 存在感を増すグローバルサウス
グローバルサウスは、ロシアによるウクライナ侵略をはじめとした地政学的分断、2040年には米中を合わせたGDPを超えるとも予想される経済規模、重要金属資源の確保等、国際政治・経済・安全保障をはじめとするさまざまな観点から、日を追うごとにその存在感を増している。とりわけ外交面においては、民主主義陣営と権威主義陣営がそれぞれ、インド太平洋経済枠組み(IPEF)やBRICS等の枠組みへの引き込みなどを通じて、グローバルサウスへの接近を図っている。
他方、グローバルサウスは政治的・経済的・文化的にも多様であり、一枚岩ではないことから、画一的なアプローチは意味をなさない。また、グローバルサウスは、自国の利益を最大化させる行動を取る傾向にあるため、西側諸国・中ロのどちらにもくみしない中間のポジションを取るなど、いずれかの陣営に完全に引き込むことは難しい。
さまざまな国がグローバルサウスに注目し、アプローチをするなか、日本の存在感は大きくない。また、日本企業は、他国企業に比べ、意思決定の速度が遅いとの指摘もある。わが国は、「選ばれる」側という視点を持ち、相手のニーズに的確に応えつつ、どのように国益につなげるかを考えなければならない。
■ 具体的なアプローチ~脱炭素分野における日ASEAN連携
グローバルサウス、とりわけASEAN諸国は、成長と脱炭素の両立を図りながら現実的なトランジションを行うため、外国からの投資を必要としている。脱炭素分野で日本が「選ばれる」には、相手国との類似性、技術力と先行経験、外交・経済面の蓄積が重要となる。
類似性として、ASEAN各国は日本と同様、人口密度が比較的高いことが挙げられる。また、再生可能エネルギーはエネルギー密度が低く、石炭火力発電よりも広い用地が必要になるため、日本の次世代再エネソリューションが活用できる。
日本はG7中、一人当たりのエネルギー消費量(家庭部門)が最も低く抑えられているなど、高い技術力や経験を有する。また、省エネ技術は費用対効果が高く、エネルギー量の削減効果を期待できることから、ASEANの現実的なエネルギートランジションに貢献できるだろう。
日本は、これまで培った外交・経済面の蓄積を活用し、自らの脱炭素に係る技術を用いて、湾岸協力会議(GCC)諸国とASEAN諸国との連携を図る可能性も考えられる。日本は幅広い外交関係を生かし、コーディネーターとして存在感を発揮することができるだろう。
【国際協力本部】