経団連の東亜経済人会議日本委員会(飯島彰己委員長)は3月13、14日、台北で台湾経済界と共に第51回東亜経済人会議を開催した。双方から約140人が参加するなか、熱のこもった意見交換を行い、日台経済関係のさらなる深化・発展に向けて共同声明を採択した。また、翌15日には、新竹サイエンスパークの台湾積体電路製造(TSMC)を訪問した。概要は次のとおり。
■ 日台産業協力等をめぐり、活発に議論
会議の冒頭、来賓の蔡英文総統があいさつ。日本と台湾は、コロナ禍や地震などに見舞われた際、互いを支え合う友好関係にあると述べた。そのうえで、日台の経済関係は一層拡大しており、とりわけ半導体分野においてTSMCの熊本工場が開所式を迎えたことや、多くの日本企業が台湾で半導体関連事業を展開していることを歓迎した。また、台湾の環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)加入に向け、日本の支援に期待を示した。
第1セッションでは、日台の経済は、米中貿易摩擦や地政学リスク、米国の政策が孤立主義に転じる可能性など、不確実な外的要因の影響を受けやすいとの指摘があった。台湾経済については、対外貿易への依存度が高く、外的要因に左右される可能性が高い一方で、米国やASEANとの経済交流を含め、多角化が着実に進展しているとの説明があった。
第2セッションでは、日台産業協力について四つの分野を取り上げて意見交換した。
まず半導体・デジタルトランスフォーメーション(DX)について、台湾側から、産業のデジタル化とともに世界的に需要の拡大が予想される半導体産業において、各国政府が補助政策を競い合っているとの説明があった。そうしたなか、台湾と日本の双方の強みを生かした協力は、互いの産業の強靭性を高め、競争力の向上につながると指摘した。
グリーントランスフォーメーション(GX)については、台湾側が、プラスチック・リサイクルやバイオマス資源などに関する技術開発の事例を紹介した。日本側は、再生可能エネルギーの導入拡大に加え、液化天然ガス(LNG)、水素、アンモニアを活用した火力発電において、日台の連携・協力の余地が大きいと説明した。
観光では、台湾の訪日客が日本の訪台客の4.5倍となっており、訪台する日本人の拡大が重要との問題意識を共有した。そのうえで、台湾側から、台湾の文化、食、自然などの魅力の発信に加えて、日本各地で実施している訪台観光プロモーションについて説明があった。また、日本側は、双方向の人的往来の拡大に向けて、メタバース空間で観光を疑似体験する取り組みを紹介した。
医療・ヘルスケアについては、高齢化が進行する日台は、医療機関での治療から、健康寿命を延伸する予防への移行が求められており、この分野での連携・協力の余地が大きいとの認識で一致した。
■ TSMCを訪問
半導体産業は、日本と台湾の緊密な連携を象徴する産業の一つである。世界最大の半導体受託製造企業であるTSMCが、2024年2月に熊本工場を開所したことは、今後の日台産業協力の一里塚となった。新竹サイエンスパークで同社の魏哲家CEOが訪問団を歓迎。その後、半導体が生活のなかで果たす役割や同社の成長の軌跡について理解を深めた。
【国際協力本部】