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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年4月11日 No.3633 アフターコロナにおける生活サービス産業のあり方 -生活者の行動変化を踏まえて/生活サービス委員会

経団連は3月14日、東京・大手町の経団連会館で生活サービス委員会(高原豪久委員長、澤田道隆委員長、細谷敏幸委員長)を開催した。2022年7月に公表した報告書「ライフ・サービス・トランスフォーメーション」に示した生活サービス産業の変革に向けて、アフターコロナにおける産業の姿を検討していくため、博報堂生活総合研究所の石寺修三所長ならびに内濱大輔上席研究員から、コロナ禍を経験した生活者の意識や行動の変容等について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 生活者は、時間をコントロールされる側から、する側へ

一つ目は、生活者の時間の使い方の変化である。コロナ禍では、直接、人と接することが限られていたことから、私生活ではオンデマンド配信サービスの需要が拡大するとともに、仕事面でもウェブ会議ツール等の利用率が急激に高まった。これらのサービスはアフターコロナにおいても定着し、生活者にとって時間の使い方の自由度が高まることにつながった。その結果、自分にとって、さまざまな情報がどのような価値を持つのかに応じて、自ら時間の流れを編集するようになった。例えば、映像作品を見る際に、かつては一定の時間を要したが、現在では、鑑賞するシーンを自身で取捨選択しつつ、繰り返し鑑賞したり、並行して作品に関する情報を検索したりすることも可能になった。また、これまでは店舗の営業時間を消費者の都合に合わせていたが、商品製作のために必要な時間を確保できるよう、作業時間に合わせて都度営業時間を調整するなど、生活者が自ら時間をコントロールし、より時間的な密度を濃いものにしようとする傾向がうかがえる。

■ 「ひとり」は、ネガティブから、ポジティブなものへ

二つ目は、「ひとり」の捉え方の変化である。「ひとり」での消費行動に対しては、従前はネガティブな印象を持たれることが多かったが、コロナ禍に半ば強制的に「ひとり」の時間が増えたことで、生活者はその楽しみ方を知るとともに、接続過剰ともいえるこれまでの人間関係に対して違和感を覚えるようになった。その結果、「ひとり」だからこそできる没入により、「いま」「ここ」の価値を最大化したり、新たな挑戦が想定外の出来事を誘発したりすることとなった。現在では、「ひとり」は、コストパフォーマンス、タイムパフォーマンスの高い、強くて前向きな個を生み出すための創造的かつポジティブな行動とも捉えられるだろう。

■ 持つ・決めるから、あえて持たない・決めないへ

三つ目は、モノの所有や使用のあり方の変化である。これまでは、新品を購入して所有し、使用した後、廃棄することが一般的であったが、ネットオークションやフリーマーケットアプリ等の活用をはじめ、サブスクリプションによるサービスの普及等が幅広い世代、あらゆるジャンルへと拡大した。その結果、購入品の売却先があることや気軽に商品の入れ替えができることは、関心が強い分野において、前向きかつ積極的な購買行動や使用意欲の向上につながった。こうした意識・行動は、コロナ禍での経験や頻発する大規模自然災害、さらには将来の社会保障への不安等によって、今後、より顕在化していくだろう。なぜなら、生活者が不確実化する未来に対して、一つの物事に決めることに不安を感じ、多くの選択肢を用意しておきたいと考えるようになるからだ。こうした行動は、優柔不断というより、先行きが不透明な時代を生きる知恵であり戦略とも捉えられる。

アフターコロナにおいて、生活サービスを提供する企業には、こうした生活者の変容を踏まえた商品・サービス設計がより強く求められるだろう。

【産業政策本部】

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