経団連の東亜経済人会議日本委員会(飯島彰己委員長)は3月6日、東京・大手町の経団連会館で、同月13、14の両日に台北で開催する第51回東亜経済人会議に先立ち、日本台湾交流協会の谷崎泰明理事長から、最近の台湾情勢と日台関係について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 総統選挙結果と頼新総統の内政課題
1月の総統選挙で民進党の頼清徳氏が当選し、台湾で初めて3期連続で同一政党が政権を担うこととなった。これは、今後の民進党による長期政権の兆しではないかといわれている。今回の総統選挙では、第三勢力として台頭した民衆党の柯文哲氏に、多くの若者の浮動票が流れたことに注目すべきである。同日に行われた立法委員選挙で民衆党が8議席を獲得し、与野党双方が過半数を獲得できないなかでキャスチングボートを握った。柯氏は、2028年の総統選挙で当選を目指すとしており、今後の立法院での動きはそれに向けたものとなるだろう。
他方、立法院院長に国民党の韓国瑜氏が選出されたことにより、新政権と議会との間にねじれが生じることとなった。かつての陳水扁政権では、ねじれ状態のもと、予算案、特に防衛費が承認されなかったことがあり、頼政権のもとでも、国内政治が不安定になる可能性が高い。
■ 両岸関係における軍事的緊張の可能性
頼氏は民進党のなかでも最も独立志向が高いとされる。中国は頼氏を最も危険な人物と認識しているため、今後も両岸の対話の機会の設定は難しいだろう。経済面をみると、対中輸出・投資が共に減少し、対中投資額は最低水準を記録するなど、台湾の脱中国依存が進行している。
中国の習近平政権は一貫して、台湾は中国の不可分の領土とし、台湾は中国にとって核心的利益であり、台湾との統一なくして中華民族の復興はないなどと発言している。中国からの緩やかな圧力により、台湾と外交関係を結ぶ国は20カ国から12カ国に減少するなど、中国にとって、一定の成果がすでに得られている。国際社会による対ロシア制裁の状況や中国経済の対外依存度に鑑みれば、軍事的緊張が高まる可能性は低く、中国は平和的統一を目指す可能性が高いだろう。
■ 米国や日本との関係
米国との関係では、直前まで台湾の駐米代表であった蕭美琴氏を副総統に就任させることで、対米関係に波風が立たないように配慮している。ジョー・バイデン大統領は、総統選挙後の最初のコメントとして、「台湾の独立は支持しない」と発言し、頼清徳氏を牽制する一方、中国に対しては、米国の台湾政策は不変であるとの明確なメッセージを送った。
日本との関係は極めて良好である。頼氏が親日家であることに加え、東日本大震災をはじめとする災害時の支援、コロナ禍におけるワクチン供与など、日台間で相互の助け合いを積み重ねてきたことから、世論調査によると、互いに対する意識は良好である。
【国際協力本部】