経団連のアメリカ委員会(澤田純委員長、早川茂委員長、植木義晴委員長)は3月13日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催した。米国アーカンソー州のサラ・ハッカビー・サンダース知事、ヒュー・マクドナルド同州商務長官、ニール・ジャンセン同州経済開発庁アジア事務所長はじめ州政府幹部から、同州の政治・経済情勢やビジネス環境などについて説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ サンダース知事
トランプ大統領(当時)と共に何度か来日したことがある。知事として再び来日できたことをうれしく思う。トランプ氏と安倍晋三内閣総理大臣(当時)は、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の実現に向けて日米の緊密な連携が不可欠であることを確認した。
中国共産党の脅威に対しては毅然とした態度で臨む必要がある。私は中国企業を州内から排除した初の知事であり、州内の防衛・航空宇宙企業は同盟国の安全保障に貢献している。また、米国の半導体産業は、積極的に競争力を高めていかなければならない。中国に一歩も譲歩することなく、同盟国とも連携しつつ、サプライチェーンの強靭化を進める必要がある。
教育改革にも全力で取り組んでいる。就任1年目には大胆な学校制度改革に着手し、教師の待遇改善や、識字教育、STEM分野(注)の教育の強化を進めている。当州が他の州に比べて劣後している識字率の向上は、生徒の将来の成功のカギを握っていると考えている。
日本企業のため、法人税率の引き下げや規制緩和を進め、ビジネスのしやすい環境を整備している。豊かな自然環境も、日本企業にとって魅力的であろう。
■ マクドナルド氏
アーカンソー州は1980年代から日本に事務所を構えていることもあって、今や幅広い分野にわたる日系企業34社が当州の45拠点で活躍している。日本は当州への投資と雇用創出の主要な担い手であり、日本向け輸出額も2022年に約4億ドルに達した。
当州は、サプライチェーンの強靭化に資する最適な投資先である。ロジスティクスに優れている。全米の総人口の40%に、トラックで1日のうちにアクセスでき、ビジネスコストの安さも魅力である。日本企業のサプライチェーン再編の候補地として、当州を検討してもらいたい。
世界のリチウム供給の15%を担い得るリチウム資源を背景に、リチウム電池などの次世代産業の育成にも注力している。電池サプライチェーンに関連する企業を積極的に誘致する方針である。
■ ジャンセン氏
当州は人口300万人、米国のほぼ中心に位置し、気候は関東地方に近い。日系企業34社が進出し、食品や農業関連分野でも活躍している。当州は地理的優位性を生かし、流通・物流の一大拠点となっている。ウォルマート本社のあるベントンビルから2時間圏内に170以上の工業用地や施設がある。繊維や革製品、建材、食品加工、航空宇宙、医薬品などでも潜在力は大きい。
全米屈指の事業環境の良さに加え、手頃な物価やアウトドア環境の魅力から、近年は州外からの移住者が急増している。次世代を担う人材育成にも力を入れ、STEM教育では全米をリードしている。日本企業からの投資を心から歓迎する。
(注)Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の分野における知識やスキルを統合的に学ぶ教育のこと
【国際経済本部】