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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年3月28日 No.3631 ジョコ政権の10年と次期政権の展望 -日本・インドネシア経済委員会

佐藤氏

経団連は3月5日、東京・大手町の経団連会館で日本・インドネシア経済委員会(垣内威彦委員長、柿木真澄委員長)を開催した。国際交流基金の佐藤百合理事から、インドネシアの展望について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 2024年大統領選挙~プラボウォ氏の勝因

2月14日、インドネシア大統領選の投開票が行われた。3候補による争いとなったが、ジョコ・ウィドド大統領路線の継承を標榜し、同大統領の長男ギブラン・ラカブミン・ラカ氏を副大統領候補に据えたプラボウォ・スビアント氏が59%の票を集め(速報値)、当選をほぼ確実にしている。勝因として、「かわいい」を打ち出したキャンペーンによりプラボウォ氏がイメージチェンジに成功したこと、36歳のギブラン氏が若者への訴求力を発揮したこと、そして、ジョコ大統領が表向きには中立としつつも同陣営にてこ入れしたことの三つが挙げられる。

■ ジョコ大統領の実績

ジョコ大統領が政権を担った10年間のGDP成長率は、コロナ禍の期間を除き5%程度で推移し、ジョコ大統領が掲げた目標を下回っている。一方で、インフレ率は目標通り2%台に低下し、失業率、貧困人口比率、ジニ係数などの分配面の指標は着実に改善した。成長のカギを握る外国投資は10年以降、合計額は横ばいだが、製造業向けのシェアは拡大している。国別でみると、日本のシェア低下、中国と韓国のシェア上昇が著しい。

ジョコ大統領は、ほぼオール与党体制を構築するとともに、オムニバス法という法律の一括改正方式を編み出し、地域間の格差是正を目的とした首都移転計画を推進するなど、いくつもの革新を起こした。開発政策では、インフラ開発に加え、ニッケル、ボーキサイトなどの自国の資源を国内で加工することで付加価値と雇用を生み出そうとする「川下化」を推進した。汚職撲滅委員会の権限縮小などが「民主主義の後退」と批判されながらも、一般国民からは目に見える開発の成果が評価され、高い支持率を維持している。

外交面では、大国にくみしない自由積極外交を展開した。18年にインド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)を主唱したことを皮切りに、22年はG20議長国、23年にはASEAN議長国を務めるなど、グローバルに存在感を高めている。

■ 次期プラボウォ政権の見通し

現時点で、プラボウォ政権のかじ取りを見通すには材料が少ないが、選挙公約にはジョコ大統領が唱えた「先進インドネシア」や、23年に政府が発表した長期開発計画「2045黄金のインドネシア」といったキーワードがそのまま用いられている。公約の順位からは、ジョコ政権以上に開発を重視する一方、環境や汚職撲滅の優先度は下がっていることがうかがえる。優先政策には補助金などの財政支出の拡大を伴う項目が並んでおり、10月の大統領就任時の組閣で財政や国営企業運営の規律を保てる人事配置がなされるかどうかが注目される。

次期政権は、内政・外交で成果を挙げたジョコ政権の基本政策を継承することになる。中期的な経済成長率は、島しょ国故の開発コスト高、格差縮小の要請、ネットゼロに向けた課題などの制約を考えると、30年代までの人口ボーナス期にあっても5%程度が現実的である。

インドネシアは、30年代に人口3億人、21世紀末においても人口規模と経済規模で世界10位以内となる可能性があることから、地政学的・地経学的に、世界のミドルパワーとして重要な地位を維持するだろう。

【国際協力本部】

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