経団連のウクライナ経済復興特別委員会(國分文也委員長)は2月9日、東京・大手町の経団連会館でウクライナのビジネス法に関するセミナーを開催した。弁護士法人キャストグローバルのウクライナ弁護士ウリバチョバ・イリーナ氏から、ウクライナにおける有望産業や、日本企業がウクライナに進出する際に理解しておくべき現地の環境・優遇策・法制度などについて説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ ウクライナのITセクターへの期待
ウクライナには外国企業が投資をするうえで、魅力的な産業分野・ビジネス環境・優遇策が備わっているといえる。特にITセクターは、キーウ、リビウ、ドニプロ地域を中心に発展しており、今後も成長が見込める産業の一つである。
ウクライナのIT産業が成長している要因の一つとして、優秀なIT人材が多いことが挙げられる。国内労働者の80%以上が大卒であり、世界的にみても有数の水準である。さらにウクライナは、欧州諸国と比較して人件費が安価なため、海外投資家はコストを抑えることができる。また、国家としてもITセクターに対する投資を奨励している。国外向けには、ソフトウエア開発・アウトソーシング・コンサルティングを含むITサービスを輸出している。国内市場では、金融、医療、教育、防衛などさまざまな産業におけるIT製品・サービスを提供している。今後も幅広い分野においてITへの需要が高まることが期待されている。
■ 魅力的な保証・投資優遇措置
ITセクターを含め、その他の分野においても一定の条件を満たすことで国家保証や投資優遇措置が講じられる。特に外国からの投資を呼び込むため、政府は「Ukraine Invest」という国家機関を設立し、海外の投資家の相談を検討段階から受け付けるなど、包括的な支援を提供している。
また、多数国間投資保証機関(MIGA)は、政情不安や軍事作戦に関連するリスクのある状況下での投資に保険をかけ、保証を提供している。戦時下においても、リビウの工業団地プロジェクトに対して、10年間の軍事リスクをカバーする最高910万米ドル相当の保険が適用される。MIGAによるこれらの保証は、今後ウクライナへの投資を検討している海外投資家に向けた後押しとなるだろう。
その他2022年2月初旬に、「Diia.City」(ディアシティ)に関する法制・税制を整備した。ディアシティは国内・海外のIT企業の経営者・雇用者向けに、主にインターネットを通じて経営管理、税務、投資インセンティブといったサービスを提供している。外国企業も条件を満たせばディアシティに登録でき、23年末現在600以上のIT企業が登録している。
ウクライナは、海外の投資家を誘致するためにさまざまな施策を展開している。日本からの投資拡大を期待している。
【国際経済本部】