経団連は2月13日、東京・大手町の経団連会館で社会保障委員会(小堀秀毅委員長、根岸秋男委員長)を開催した。厚生労働省の鹿沼均政策統括官(兼内閣官房全世代型社会保障構築本部事務局長)から「全世代型社会保障構築に向けた議論の模様」と題し、社会保障を取り巻く状況や今後の改革に向けた見通しについて説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 社会保障を取り巻く状況
日本の人口は今後も減少し続け、特に2040年から70年にかけては、毎年約80万人ものペースで減少していく。加えて40年には、認知症患者が25年度比で約1.2倍になり、高齢世帯の約4割が単身世帯となるなど、人口構造の質的な変化が予測される。少子高齢化がわが国の深刻な課題であるものの、少子化対策の効果が表れるのは50年から100年先と時間がかかる。
■ 23年末の政府の動き
政府は、少子高齢化、人口減少がわが国の直面する最大の危機であるととらえている。その解決のためには、30年代に入るまでをラストチャンスととらえ、少子化対策、全世代型社会保障と経済対策をパッケージとして取り組み、好循環を生み出すことが必要である。
「全世代型社会保障」の構築に向け、24年から40年までを三つの時間軸に分けたうえで、(1)働き方に中立的な社会保障制度の構築(2)医療・介護制度等の改革(3)地域共生社会の実現――という三つのテーマに沿って、今後取り組むべき課題をより具体化・深化させた「改革工程」を取りまとめた。
(1)では、勤労者皆保険の実現に向けた取り組み、(2)では、能力に応じた支え合いやサービスの効率化、(3)では、住まいを社会保障の柱の一つに位置付け、支援を強化すること等を掲げている。
28年度までに実施する取り組みは、各年度の予算編成過程にて結論を出していく。
こども施策については、これまでの待機児童対策中心から大きく転換し、全てのこどもを社会全体で支えるべく、「こども未来戦略」を策定した。また24年度診療報酬・介護報酬改定では、人材の確保を最も重視し、医療・介護従事者の処遇改善を目指し、プラス改定となった。
■ 今後の社会保障改革に向けた見通し
まずは先述の改革工程の着実な実施が求められる。その際、医療・介護の大規模化・効率化による必要なサービスの確保や、金融所得の勘案等、能力に応じた負担の徹底といった、制度の持続性確保の視点が重要である。加えて、社会保障給付費の将来見通しについても、24年中にアップデートしたいと考えている。
最後に、少子化対策のなかで重要なのは「仕事と子育ての両立」だと考えている。少子化の要因の一つは、出産や育児による収入の低下や喪失を経済的リスクととらえることにある。出産退職・非正規化によって生涯所得は大きく減少するため、平均出産年齢の30歳頃を機に正規雇用率が低下していく「L字カーブ」の解消が課題である。出産を機に仕事を辞めた理由としては、制度、職場の雰囲気、働き方等が多く挙げられている。共働きが望ましいと考える割合が男女共に、特に男子学生で増えているなか、夫婦共働きで、共に育児を行う「共育て」が定着していくよう、社会全体の意識改革が極めて重要である。
【経済政策本部】