1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2024年3月14日 No.3629
  5. 幹事会で人口戦略会議の三村議長、山崎実務幹事が講演

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年3月14日 No.3629 幹事会で人口戦略会議の三村議長、山崎実務幹事が講演

三村氏

山崎氏

経団連は2月20日、東京・大手町の経団連会館で幹事会を開催した。人口戦略会議の三村明夫議長(日本製鉄名誉会長)と山崎史郎実務幹事(内閣官房参与)が「人口ビジョン2100」について講演した。概要は次のとおり。

人口減少問題は誰もが知っているが、自分事としてとらえにくく、危機感が共有されにくい問題であるため、対策に後れを取ってきた面がある。こうした状況を踏まえ、民間の立場から人口減少問題の解決を目指し、立ち上げたのが「人口戦略会議」である。同会議は2024年1月、「人口ビジョン2100~安定的で、成長力のある『8000万人国家』へ」を取りまとめた。

23年に発表された人口推計によれば、2100年の日本の総人口は約6300万人、高齢化率は40%と高止まりすると推計されている。さらにその後も人口は減少し続け、2120年には約5000万人になると予測されている。2100年には、割合で見ると、生産年齢人口1人に対し1人の高齢者を支えることになる。そのため、こうした状況下では、社会保障制度が立ち行かなくなることは想像に難くない。同時に、日本の人口の多くが引き続き東京圏に集中する可能性が高いことに鑑みると、今後、多くの地方自治体が消滅していくことを示唆している。さらに、国内の消費者人口が半減することに加え、高齢者比率も高い水準となる。このため、国内消費は大きく減退し、企業の設備投資も大幅に減少する状況が生じ、日本のGDPは大きく減少することが見込まれる。

こうした危機的な事態に対し、二つの戦略の実践を通じて、2100年に8000万人規模で人口を定常化させることを提言したのが、今般の「人口ビジョン2100」である。すなわち、(1)若者世代の所得向上や「共働き・共育て」の環境整備を進めることなどにより、人口減少のスピードを緩和させ、最終的に安定させる「定常化戦略」(2)人への投資などを通じて質的な強化を図り、現在より小さい人口規模でも、多様性に富んだ成長力のある社会を構築する「強靭化戦略」――により、人口の安定と、成長力強化の好循環を実現すべきと提言している。

その第一歩として、国民全体で意識を共有し、官民を挙げて取り組むための「国家ビジョン」を策定することが求められる。特に政府は、人口減少問題そのものを議論する審議会が存在しない現状を踏まえ、内閣に「人口戦略推進本部」を新たに設ける一方、政府への勧告権を有する審議会を内閣総理大臣直属として設置するなど、二つの戦略を一体的・総合的に推進する体制を整備すべきである。

少子化問題は、日本のみならず、韓国や台湾、中国、シンガポールなど、東アジアに共通する課題となっている。日本が世界に先駆けてこの問題を解決することで、東アジアの成長に貢献することが求められる。

【総務本部】

「2024年3月14日 No.3629」一覧はこちら