経団連と中国経済連合会(中国経連、芦谷茂会長)は2月21日、山口県宇部市内で「第51回中国地方経済懇談会」を開催した。経団連からは、十倉雅和会長、副会長らが、中国経連からは芦谷会長をはじめ会員約150人が参加し、「新たな成長に向けた構造変革の実現~魅力溢れる中国地方創生への挑戦」を基本テーマに意見交換した。
経済懇談会の開会あいさつで中国経連の芦谷会長は、中国経連では、2022~24年度の3年間を「新しい未来に向け地域の変革と成長を確かなものにする期間」と位置付け、「デジタルトランスフォーメーション(DX)・グリーントランスフォーメーション(GX)の推進による地域産業の復興」「ICTと地域資源の活用による魅力ある地域づくりの推進」「新たな時代を担う人材の育成・確保」を中期的な活動の柱として取り組んでいると説明した。
続いて、経団連の十倉会長は、「日本経済は、継続的な賃金引上げのモメンタム、投資・消費の拡大などに支えられ、持続的な経済成長の実現に向けた力強い一歩を踏み出している」と指摘。「24年は、この上向きのモメンタムを加速させ、官民が連携して30年来のデフレからの完全脱却を実現する、歴史的な転換の年にしたい」と述べ、「そのために、経団連は『成長と分配の好循環の実現』に全力で取り組んでいく」と決意を示した。
■ テーマ1「時代に即した地域産業への変革」
まず、地域企業へのDX導入促進、スタートアップの創出・育成、GXの推進に関して、中国経連から問題提起があった。
これに対して、経団連から、
- (1)DXを進めるためには、異業種を含めた各主体による有機的かつ自律的なデータ連携、業務プロセスの改善、生成AIの積極的な活用などが有効である(東原敏昭副会長)
- (2)カーボンニュートラル(CN)の実現には、CO2排出削減が難しい産業部門での電化の促進やプロセスの脱炭素化を進めることが不可欠となる(泉澤清次副会長)
- (3)バイオトランスフォーメーション(BX)の実現には、人材・技術・資金・情報が集まり、ステークホルダーが有機的につながるエコシステムの構築が欠かせない(小堀秀毅副会長)
- (4)GXやDXなどわが国産業を取り巻く環境に適切に対応するためには、規制や制度を不断に見直すべきであり、例年、経団連として規制改革要望を取りまとめている(筒井義信副会長)
- (5)スタートアップ・エコシステム構築のカギは、大学や研究所を核としたスタートアップ創出であり、これにより支援人材や関連企業が周辺に集まる(久保田政一副会長・事務総長)
――との発言があった。
■ テーマ2「活力に溢れる地域の創成」
次に、観光地域づくり、中山間地域でのDX推進と第1次産業の活性化、多様な人材の活躍促進について、中国経連から問題提起があった。
これに対して、経団連から、
- (1)各地域の多様なステークホルダーが主体的に地域の課題解決などに取り組む「内発型の地域づくり」を推進すべき。また、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の全国的な機運醸成への協力をお願いする(永井浩二副会長)
- (2)アドベンチャーツーリズムをはじめとする広域周遊型の観光の推進は、国内だけではなく、訪日外国人観光客にも訴求力を持つものとして大変重要である(永野毅副会長)
- (3)人手不足の解決に向け、特に第1次産業においてDXを推進するとともに、それに伴う電力需要に対し、安価で安定したエネルギー供給を行う必要がある(澤田純副会長)
- (4)「2024年版経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)では、春季労使交渉における経営側の基本スタンスとして、「構造的な賃金引上げ」の実現に貢献していくことが経団連・企業の社会的な責務であると明記した(小路明善副会長)
――との発言があった。
最後に、安永竜夫副会長が、中国経連の多岐にわたる取り組みは、中国地方の活性化にとどまらず、わが国全体の成長に欠かせないものであり、こうした「魅力溢れる挑戦」を今後とも続けてほしいと総括した。
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懇談会に先立ち、一行は宇部市のヤナギヤを視察。顧客のニーズに応えた機械作りの取り組みについて説明を聴くとともに、カニカマ製造装置をはじめさまざまな食品加工機械を見学した。
【総務本部】