経団連は1月31日、東京・大手町の経団連会館で外交委員会(片野坂真哉委員長、大林剛郎委員長)を開催した。高市早苗経済安全保障担当大臣と飯田陽一内閣府政策統括官から、経済安全保障に関する諸施策について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 高市大臣
経済安全保障推進法の4分野のうち、サプライチェーン強靭化については、2022年に指定した11の特定重要物資に、今般、先端電子部品を加えることにした。経済安全保障重要技術育成プログラムは5000億円の予算があり、各プロジェクトの公募・採択を行っている。
また、基幹インフラの安定的な提供の確保は、24年5月からの制度運用の開始に向けて準備している。加えて、対象事業に一般港湾運送事業を追加すべく、今通常国会に法改正案を提出したい。特許出願の非公開については、Q&Aを公表しているほか、各地で制度に関する説明会を開催している。
経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度については、「経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度等に関する有識者会議」(有識者会議)が1年弱にわたり議論を重ね、1月19日に「最終とりまとめ」を公表した。これを受け、岸田文雄内閣総理大臣から、(1)政府が保有する経済安全保障上重要な情報を保護・活用するため、コンフィデンシャル級の情報を保護の対象とする制度を創設する新法案を今通常国会に提出する(2)新制度がわが国の既存の情報保全制度とシームレスに運用されるよう、特定秘密保護法の運用基準の見直しの検討を含め必要な措置を講じる――ことについて指示があった。
まずは、新法案の成立に向けて与党との協議を進めていきたい。新法案は、わが国の情報保全の強化と国際展開する企業の皆さまに資するものである。
■ 飯田氏
有識者会議の最終とりまとめで示された経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度の概要は次のとおりである。
対象となる情報は、真に守るべき政府が保有する情報に限定する。また、特定秘密制度ではトップシークレット級とシークレット級の情報が対象だが、コンフィデンシャル級の情報も法律に基づく情報指定の対象とする。
秘密指定された情報の提供を受けるのは、政府から情報共有を受ける意思を示し、秘密保持契約を締結した民間事業者等である。そうした事業者については、施設の適格性に加え、事業者そのものの属性や組織の適格性も確認する。
秘密指定された情報へのアクセス前に実施する個人に対する調査は、丁寧な手順を踏んで本人の真の同意を得ることが大前提である。情報へのアクセスの可否を判断するのは秘密指定を行う各行政機関だが、調査を一元化することによって、調査に伴う個人や行政機関の負担を軽減する。
漏えい等の罰則については、トップシークレット級やシークレット級の情報であれば、特定秘密保護法と同等の水準となるだろうが、コンフィデンシャル級の情報はそれらより機微度が低いことを踏まえて検討する。また、法人が組織ぐるみで、事業活動の一環として漏えいした場合は、法人に対する罰則も導入したい。
【国際経済本部】