経団連は1月30日、東京・大手町の経団連会館でクリエイティブエコノミー委員会(南場智子委員長、村松俊亮委員長)を開催した。わが国のコンテンツ関連予算と取り組みの方向性について、内閣府の奈須野太知的財産戦略推進事務局長、経済産業省の牛山智弘商務情報政策局審議官、文化庁の中原裕彦文部科学戦略官から、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ コンテンツ振興に向けた全体戦略と論点(内閣府)
内閣府の知的財産戦略推進事務局は、わが国のコンテンツ振興の司令塔として、現在、「知的財産推進計画2024」の策定にあわせ、新たなクールジャパン戦略(CJ戦略)について検討を進めている。CJ戦略は近年、インバウンドの増加、農林水産品等の輸出の促進を中心として日本の魅力の発信に取り組んできた。今般、海外展開の推進と、クリエイター支援・構造改革等に注力するとともに、各施策の進捗状況を評価・管理するために重要業績評価指標(KPI)を設定し、成果指標を裏付けに新たな事業拡大につなげていくという方針で検討している。また、コンテンツ分野の振興については、基幹産業としての成長を目指し、主にクリエイターの挑戦を促すために必要な環境整備(労働環境等の改善、コンプライアンスの遵守、適切な対価支払いの実現等)について検討する。その際、コンテンツ分野ごとに論点が異なることを踏まえて整理し、産学官連携のもと議論を進めていく。
■ コンテンツ等の制作支援・ロケ誘致、海外展開支援(経産省)
令和5年度補正予算では、わが国の文化芸術コンテンツ・スポーツ産業の海外展開促進事業として68億円を計上し、応用事例の少ない新たなデジタル技術領域を活用した取り組みへの支援やコンテンツ制作・流通工程のデジタル化支援、映像作品の制作費支援、ロケ誘致やローカライズ・プロモーション支援を進める(Japan content localization and business transformation〈X〉、JLOX+補助金)。とりわけロケ誘致支援は、国内の映像産業の振興を図る観点から、海外制作会社によるVFX(Visual Effects、視覚効果)等を活用した国内での映像制作を促すものである。加えて、新たに予算を計上して、デジタル等クリエイター人材創出事業と日本貿易振興機構(JETRO)海外拠点機能強化を進めていく。前者は、突出したデジタルクリエイター人材の発掘に向け、制作面での技術的な伴走支援を行いつつ、成果発表の機会を設ける等により、わが国の産業競争力の強化を図る。後者は、JETROの海外拠点にコンテンツ専門人材を配置し、海外現地でのクリエイターや企業に対する支援、現地マーケット等へのコアネットワーク構築を推進していく。コンテンツの海外展開を促進していくため、前年度に引き続き令和6年度も当初予算に計上し、国内で開催する国際イベントにおける日本コンテンツの発信の場の整備や、海賊版対策の推進、政府間対話に基づく共同制作などの国際連携を図っていく。
■ クリエイター等の育成、海外への発信力強化(文化庁)
クリエイターを取り巻く課題は大きく三つある。一つ目は、クリエイター等の挑戦機会やサポート環境、制作資金の不足がボトルネックとなり、優秀なクリエイター等が十分に成長と活躍の機会を得られていないことである。そこで、クリエイター等による企画から海外展開までの一体的な活動と、それら活動の発信の場である博物館、美術館、劇場等の文化施設の機能強化を、基金により弾力的かつ複数年度にわたって支援していく。二つ目は、大きな国内市場が海外に展開するインセンティブを生じにくくしていることである。この解消に向け、将来活躍が期待される未来のトップアーティスト等の海外展開支援、文学作品、アニメ、マンガ等の翻訳家・批評家の育成、さらには文化芸術のデジタルアーカイブ化の拡充とその利活用を推進していく。三つ目は、取引等の適正化とデジタルトランスフォーメーション(DX)時代への対応の必要性である。適正な契約関係構築に向けたガイドラインおよび契約書のひな型等を公表するとともに、文化芸術活動に関する法律相談窓口の運用の充実・強化に取り組む。同時に、著作物等の適法・円滑な利用に向けた新たな裁定制度の創設等、令和5年改正著作権法の円滑かつ確実な実施等を進め、文化と経済の好循環の実現を図っていく。
【産業政策本部】