経団連は1月25日、東京・大手町の経団連会館で消費者政策委員会企画部会(楯美和子部会長)を開催した。消費者庁の尾原知明消費者政策課長から、第5期消費者基本計画の策定に向けた消費者行政の方向性について、日本アドバタイザーズ協会の中島聡専務理事と小出誠客員研究員から、デジタル広告の現状と課題について、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
■ 消費者庁
消費者行政の今後の方向性を決めるにあたり、次の五つの社会情勢の変化を考慮する必要がある。
1.社会構造の変化
一人暮らしの高齢者が増加するなど、消費者を取り巻く環境は変わってきている。今後は行政だけでなく、民間活力を生かした消費者利益の擁護・増進の仕組みがより一層必要となってくる。例えば、消費者被害の防止に向けて、地域の見守り機能を兼ねた移動スーパーの実証事業を行っている。
2.社会のデジタル化
デジタル化が急速に進むなか、悪質な行為を未然に防ぎ、是正することが重要になっている。法整備・法執行だけでは対応が後追いになってしまうため、事業者の自主的な活動の促進や消費者のリテラシー向上が欠かせない。
3.取引の多様化
例えば、海外からの越境取引が増加している。危険な製品が流通しないよう、ネットモール各社が、製品の安全確保に向けた活動を進めている。
4.国際協調
世界的に、持続可能な社会の形成や公益性、人権が問われる時代になっている。政府は、消費者志向経営とエシカル(倫理的)消費を推進している。
5.危機対応
震災や感染症等の危機対応、緊急時における正確な情報提供が重要な課題となっている。
こうした社会の変化を踏まえて、消費者政策の課題を整理し、施策を計画的に推進していくため、今後、2025年度以降を対象とし、消費者政策の中長期的な方向性を示す「第5期消費者基本計画」を策定していく。
■ 日本アドバタイザーズ協会
近年、デジタル広告市場が急激に伸長している。デジタル広告には、(1)特定の人に対して効果的に広告を表示できる(2)広告の効果を確認しやすい(3)多様な形式に対応できる(4)少ない費用、短い準備時間で広告を掲載できる――といった利点が多い半面、商流が複雑で、瞬時に成約するため、広告商流の関与者や掲載サイト、掲載面を把握しづらく、マス広告以上に高い危機対応が求められる。
そこで、安心・安全な広告掲載が実現できるよう、21年にデジタル広告品質認証機構が設立され、優良な事業者の業務品質の認証を進めている。主に(1)アドフラウドといわれる、あたかも人が広告を見たかのように偽装した広告露出やクリックも含めた「無効トラフィック」の排除(2)不適切なコンテンツ、ウェブサイト、アプリへの広告掲載を防ぐ「ブランドセーフティ」――の二つが認証の対象となっている。
昨今はAIの進化に伴い、例えば悪質な自動化プログラムの作成が容易になり、クリックを偽装して不当に広告収入を得やすくなるなど、デジタル広告の問題は高度化している。広告単価や効率性を追求するだけでなく、消費者に対して良いブランドイメージが伝わるかどうかという視点も重要になる。広告主企業においては、経営層がコミットしてデジタル広告の課題を認識し、対策を講じてもらいたい。
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説明後、製品安全誓約の意義、地域の見守り活動と個人情報保護法との関係、デジタル広告のプライベートマーケットプレイスの現状等について、活発に意見が交わされた。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】