経団連は1月11日、東京・大手町の経団連会館で韓国の韓国経済人協会(韓経協)(注)と首脳懇談会を開催した。経団連側からは十倉雅和会長はじめ14人、韓経協側から柳津会長はじめ15人が出席した。日韓双方の経済情勢や今後の展望、社会課題への対応、産業協力の推進、国際的枠組みにおける協力をテーマに意見交換した。10日の歓迎夕食会には、齋藤健経済産業大臣、11日の昼食会には柘植芳文外務副大臣がそれぞれ出席し、あいさつした。首脳懇談会の概要は次のとおり。
■ 日韓関係改善の流れを盤石なものに
開会セッションで十倉会長は、「2023年3月の日韓首脳会談を契機に、日韓関係は改善してきた。経団連も、未来志向の日韓関係構築に向けて、韓経協と共に『日韓・韓日未来パートナーシップ基金』を通じてさまざまな事業に取り組んでいる。現下の世界情勢においても、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の再構築に向けて、両国が連携・協力していく必要がある」と発言した。
韓経協の柳会長は、能登半島地震の犠牲者に哀悼の意を表すとともに、被災された方々へのお見舞いを述べた。そのうえで、「日韓関係改善の兆しを逃すことなく、さらなる経済協力を推進すべきである。人工知能やバイオなどの次世代分野やスタートアップ分野などを含めた産業協力分野の拡大、人的交流の促進に向けて議論し、協力したい」と両国の一層の連携推進に期待を示した。
■ 日韓・韓日未来パートナーシップ基金の活動
続く特別セッションでは、同基金の日本側諮問委員長の深川由起子早稲田大学政治経済学術院教授ならびに韓国側諮問委員長の姜晟振高麗大学校経済学科教授から、イノベーション創出に向けたスタートアップ連携のほか、地域活性化、水素を中心とした両国間のエネルギー協力など産業協力の可能性と展望についてそれぞれ説明を聴いた。また、同基金の今後の共同事業の展開について、運営委員である久保田政一経団連副会長・事務総長および金昌範韓経協副会長がそれぞれ報告した。
■ テーマごとに連携・協力の可能性を議論
第1セッションでは、双方から日韓の経済情勢と見通しについて説明があった。
続く第2セッションでは、社会課題解決への対応策をめぐり議論。まず気候変動問題について、両国とも50年のカーボンニュートラル(CN)実現を掲げており、デジタル技術を活用した省エネルギー化や水素・アンモニアの供給網構築を通じ、バリューチェーン全体の脱炭素化に向けたさらなる取り組みの重要性を共有した。少子高齢化にあたっては、質の高い日本の介護技術・サービスを活用した連携、外国人材の受け入れにおける知見や経験の共有などが挙げられた。
次に産業協力の推進について、重要な基盤である価値創造力を持つ人材の育成に取り組むべきとの認識で一致した。さらに、日韓のスタートアップは相互補完性があり、交流・連携を促進することで一段の成長につながる可能性があるとの言及があった。
国際的枠組みにおける協力について、現下の国際経済情勢に鑑み、日韓は競争関係から協力関係へと移行すべきとの指摘があった。そのうえで、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)や地域的な包括的経済連携(RCEP)協定といった既存の国際的枠組みの意義を踏まえて、両国で必要な協力を進めるべきとの共通認識を得た。特にCPTPPについては、高水準のルールを満たせる国・地域への拡大を促進することが重要かつ必要であるとの観点から、韓国の加入に向けて働きかけを行うこととした。
一連の議論を通じて、経団連と韓経協は引き続き、日韓経済関係の拡大と深化に向けて協力し、未来志向の日韓関係の発展に役割を果たしていくことを確認して、共同声明を取りまとめた。次回の首脳懇談会は、24年下半期に韓国・ソウルで開催する予定である。
(注)23年9月に全国経済人連合会(全経連)から韓国経済人協会(韓経協)に名称を変更
【国際協力本部】