経団連は12月27日、宇宙開発利用推進委員会の企画部会(佐藤智典部会長)と宇宙利用部会(山品正勝部会長)の合同会合を東京・大手町の経団連会館で開催した。情報通信研究機構(NICT)ネットワーク研究所ワイヤレスネットワーク研究センターの豊嶋守生研究センター長から、同氏が事務局長を務めるスペースICT推進フォーラムにおける異分野連携促進の取り組みについて説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 宇宙分野における通信技術の世界動向
近年、非地上系ネットワーク(地上から海、空、宇宙に至るまで、すべてを多層的につなげる通信ネットワークシステム。Non-Terrestrial Network, NTN)の活用への期待が高まっている。衛星通信の技術的進化や5Gネットワーク技術が衛星系・NTNに接続されていくことで、2030年ごろには超高速・大容量・高機能な無線通信が3次元的に拡張され、陸上、海洋、空域から宇宙に至るすべての領域をシームレスにつなぐ高度な情報通信ネットワークが実現すると見込まれている。
■ スペースICT推進フォーラムの活動
このような宇宙に係る通信技術の多面的な発展を踏まえ、わが国における革新的技術の研究・開発・利用を促進する体制の構築とともに、関連する企業・団体が広く参画するコミュニティの形成を図るため、20年7月1日にスペースICT推進フォーラムが設立された。当フォーラムでは異分野連携の促進、協調領域・競争領域の整理、国際標準化に関する動向の共有、将来の通信放送衛星の技術開発や実証計画の方向性に関する検討・提案を行う。また、宇宙における通信技術のうち、特に重要な技術である5G/Beyond 5G連携技術と光通信技術については、それぞれ分科会を設け、より詳細に議論している。
■ 5G/Beyond 5G連携技術分科会の活動
18年から40年までの衛星関連市場を予測したモルガン・スタンレーのレポートでは、40年における衛星サービス市場は2810億ドルに達すると報告されている。
同分科会では、宇宙から地上までが多層的に接続されるネットワークの構築に向け、衛星通信と5G/Beyond 5Gの連携技術の使い勝手の向上、カバレッジの拡大、柔軟性・持続可能性の向上について検討を進める。具体的には、今後実証すべきNTNのユースケース・要素技術案の抽出や、小型衛星コンステレーションを複数ユーザーで利用するライドシェア方式の具現化である。加えて、アジア太平洋地域の無線通信標準化団体に対しNTNのユースケースおよび関連技術に関する意見を提出することで、国際標準化にも貢献する。
■ 光通信技術分科会の活動
光通信技術は日本の競争力強化に資するものである。同分科会では民間主導で新たな光通信技術の開発・試験・運用体制の創出を目指している。そのため光通信技術による高速通信、大容量通信、長距離通信を実現するための技術面・制度面での課題について議論を進める。さらに分科会構成員間で、研究・調査の結果や社会的および将来ニーズを共有することによって開発すべき技術の特定につなげ、有志構成員による当該技術の実証を後押しする。
■ スペースICT推進フォーラムの今後の展望
当フォーラムは、研究開発すべき宇宙分野における通信技術を民間主導で議論し、宇宙戦略基金等の研究開発のプロジェクト化に貢献することで、日本から世界に打って出る将来サービスの創出につなげたいと考えている。そのためにも、異分野から宇宙業界への参入を目指すベンチャーといった企業・団体の当フォーラムへの入会を歓迎している。わが国の国際競争力の発揮に向け、各方面からの一層の参画・支援を期待する。
【産業技術本部】